研究実績の概要 |
H27年度より京都大学では毎年4月に全新入生3,000人に対して心肺蘇生教育を実施している。本研究はこれらの教育を受けた学生を対象に、質問票を配布して人が倒れた現場に遭遇した頻度、遭遇した際何らかの救命活動を実施したか否かを評価した。 対象学生8,800人のうち4,979名から回答を得ることができた。入学までの心肺蘇生講習会受講経験の有無を質問したところ、9.0%が小学校で、30.2%が中学校で、50.2%が高等学校で経験をしていた。また、大学入学後61.8%の学生が実技を伴う心肺蘇生講習会を受講していた。人が倒れた場面への遭遇頻度は2.9/100 person-year、心停止場面への遭遇頻度は1.5/100 person-yearであった。人が倒れた現場で何らかの救命行動を実施しなかった理由の最たるものが「他の人が行っていた」であった。人が倒れた場面の環境(周りに人が居たか、倒れた人との関係)と救命行動実施について検討したところ、自分一人だけの場合は4.4倍(Adjusted OR4.41, 95%CI 1.86-10.43)、家族や友達と一緒にいた場合は、3.8倍(Adjusted OR3.78, 95%CI 2.16-6.62)誰か周りに人が居る時よりも救命行動を実施することが分かった。今回、CPR教育を受けた人を長期的にフォローし、人が倒れた現場に遭遇する頻度を始めて明らかにした。特定の大学の学生の結果であり、サンプルに偏りがあることは否めないが、今後、CPR教育の普及、教育プログラムの内容を検討するにあたり貴重なデータを得ることができた。
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