最終年度であったこと、また、研究の方向性が発散してしまっておりそれらを一度整理する必要があったことから、論文化できる内容について順次論文化し、英字誌に2報が掲載された(いずれも単著)。"A minority view in the national health care system : the history of neurologic death legislation in Japan"では日本の脳死判定をめぐる議論をアメリカ等での議論を参照しながら詳細に論じた。"Conscientious Objection and Other Grounds for Vaccination Refusals Worldwide."では、アメリカの枠組みを利用して、とりわけ医学的でない理由に着目しながら世界的なワクチン接種拒否の展開を検討した。投稿が視野に入るレベルまで書き進めた論文としては現在2件(いずれも英文)がある。まず、過去数年の間にアメリカ合衆国での脳死判定拒否については新しい動きが見られるので、こちらについても状況を解説したうえで、議論で見過ごされている点を特に指摘した論文を用意している。ここにはポーランドの国際学会(10月)での発表"Revisiting autonomy in the new era in light of conscience"での知見を活用している。また、代替医療を何らかの信念に基づいて選び、その際に標準的治療の拒否を含む事例について、これまで扱ってきた他の事例との関連性を確認するために、まず日本の事例を検討した論文を用意している。研究が進展するにつれて考究の対象となる事象の多様性がより顕著になったためにさらに論文化を進めて全体像の理解に進んでいく必要がある。
|