研究課題
吸入療法は内服療法と異なり、多種多彩な吸入器が存在し、それら取り扱い、吸入手技および用法用量の理解や習得が必至となる。しかし、吸入療法は気管支ぜん息(ぜん息)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療で中心的な役割を演じている。吸入アドヒアランスは海外の報告では10~40%の結果と報告されているが、我々の研究では、喘息で76.2%およびCOPD患者で78.2%と良好なアドヒアランスを示していた(Imamura Y et al. Allergol Int 2017)。このようなことから日本人独自の評価ツールが必要不可欠と考えられる。Adherence Starts with knowledge-20(ASK-20)は吸入薬のコンプライアンスの評価に特化していないが、まず、ASK-20の結果を参考に吸入薬アドヒアランスの傷害因子の抽出を試みた。2014年から2015年研究申請者および九州ぜん息セミナー研究会員で行ったアンケート調査結果から、日本人のぜん息とCOPDにおける内服薬および吸入薬におけるアドヒアランスバリアについて検討した。ぜん息とCOPDでは、吸入薬で異なったアドヒアランスバリアの結果を得た。経口薬に対して吸入薬の独立したアドヒアランスバリアは、COPDでQ8(私は目標としている健康状態に近づいているのが自分でわかる;2.49[1.39-4.47];p=0.0022)、喘息でQ2(再処方をしてもらうための受診が遅れ、服薬が中断してしまうことがある;2.69[1.26-5.75];p=0.0127)であった。また、吸入薬のみに対してアドヒアランス不良患者では、COPDでQ3(アルコールを飲むので、薬が服用できない;6.63[1.27-34.7];p<0.05)、喘息でQ1(時々、薬を服用するのを忘れることがある4.29[1.83-10.0];p<0.05)が吸入薬に関する独立したアドヒアランスバリアであった(Sasaki J, Imamura Y et al. 2018 submitted)。これらの結果は患者教育をするうえで参考となりうる。また、今後の研究を進めていくうえで傷害因子の特定化の一助になりうる。
2: おおむね順調に進展している
本研究で収集したデータから、日本人ぜん息及びCOPD患者における吸入薬アドヒアランスを低くする傷害因子を抽出できた。また、それぞれの疾患における独立したアドヒアランスバリアの特定をすることができた。さらに、アドヒアランス不良患者に対する傷害因子の検討まで行うことができた。
今回、抽出した傷害因子を参考にし、ぜん息及びCOPD患者のエキスパートを選定する。選出された患者による座談会形式で、抽出された傷害因子を患者側、治療約束、社会面側及びそのほかにカテゴリー分類し、内服薬との相違点や類似点について検討を進めていく。
現在の研究計画にそって進んでいるが、今後のシステム構築や質問票の作成までに至っていないため。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Allergology International
巻: 66 ページ: 482-484
10.1016/j.alit.2016.10.008