平成29年度は、医療・介護現場を中心に日本の職場で実施されてきた、労使主体の「職場改善活動」の共通点を主にヒアリング調査から抽出するとともに、他の第三次産業においても実施し、現場に根付く職場改善活動の必須要素を明らかにした。その結果、職場改善活動を推進する必須要素に関して、医療介護現場を中心とする良好事例が収集できた。活動そのものに関する調査からはこれまでの研究結果と併せて、「活動を補助するシンプルなツールの使用」、「現場の全ての労使の参加」、「情報共有」、「現場の労使をエンパワメントする効果」、「各現場の状況に合わせたフレキシブルな改善方法」、「現場を統括する立場のスタッフの協力」、「シフト制に対応できる情報共有ツール」、「既存のシステムに組み込める簡易さ」の8項目が必須要素として抽出された。一方、現場の良好事例からは「相談しやすいレイアウト配置」、「整理整頓」、「ラベルの工夫」等の他の職場改善と共通している取り組みに加え、「共有カルテによるケアの視点の標準化」、「看護ケース勉強会」等の自身や職場全体の専門家としてのスキルアップにつながるような項目が必須要素として抽出された。このように医療・介護職の職場改善には、職場の働きやすさと共に、「働きがい」を追求することが必須要素として挙げられることが示唆された。これは医療職以外の第三次産業での職場改善における良好事例にも認められた。平成30年度は引き続き現場ヒアリング・良好事例収集および文献レビューを実施するとともに、導入・維持に必要な要素を整理し、チェックリストの概要作成を実施するとともに、医療・介護現場での職場改善の導入や継続を支援するためのツールとして、現場の労使が活用できるチェックリスト開発に資する情報を収集する予定である。
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