研究課題/領域番号 |
17K15758
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
雑賀 史浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10644099)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コカイン / メタンフェタミン / 前頭前皮質 / CPP試験 / ケモカイン / 薬物依存 / 炎症 |
研究実績の概要 |
薬物依存は、サイトカインやケモカインネットワークなどの炎症性メディエーターを介した神経炎症性疾患と位置付けられる。本年度、我々は依存性薬物を用いた薬物依存形成期における新規中枢神経炎症性メディエーターの探索を行なった。CPP法によるメタンフェタミン精神的依存形成モデルについては、すでに確立している。本年度はこれに加えて、コカイン精神的依存形成モデルも確立させた。これらの薬物による依存形成期におけるマウス前頭前皮質の炎症性メディエーター発現を評価した。メタンフェタミン(1日1回3日間、皮下注)反復投与の最終投与1時間後におけるマウス前頭前皮質をDNAマイクロアレイ法で評価したところ、これまで我々が報告を行ってきたケモカインCCL2、CCL7以外にCXCL1の有意な発現増加を認めた。また、同様に定量的PCR解析で評価しても、CXCL1の発現増加が認められた。これらのケモカインの発現についてコカインでも確認した。コカイン単回全身投与1時間後のマウス前頭前皮質においても、メタンフェタミン同様にCCL2、CCL7、CXCL1発現増加が認められた。CXCL1の発現増加は、コカイン投与後2時間においても持続していたが、CCL2、CCL7の持続は部分的なものであった。また、コカイン反復投与(1日1回3日間、皮下注)においても、マウス前頭前皮質におけるCCL2、CCL7、CXCL1の発現パターンは、単回投与と類似していた。 本年度においては、依存性薬物であるメタンフェタミンとコカインがマウス前頭前皮質においてCCL2、CCL7、CXCL1などケモカインを同様に発現増加させることおよび、CXCL1発現増加が、メタンフェタミンとコカイン投与どちらにおいても、投与2時間後においても持続していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期間における目標は、これまで観察を行ってきたメタンフェタミン以外の薬物も用いて、まずは依存形成基盤における炎症性メディエーターの関与を明らかにすることであった。今回は、コカインを用いてマウス前頭前皮質におけるメタンフェタミンおよびコカインにより発現する炎症性因子についての解析を主にしていた。前述の通り、これまでメタンフェタミンで報告してきたケモカインCCL2、CCL7などの顕著な発現増加がコカイン投与においても認められることおよび、これらの薬物に共通の新規炎症性因子としてケモカインCXCL1発現増加を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これらケモカイン発現増加と薬物依存形成との関連性について評価するため、依存形成期においてケモカイン受容体遮断薬を用いたCPP試験を中心に実験を行う。さらに依存形成期のみならず、依存性薬物の再燃・再発メカニズムにおけるサイトカイン-ケモカインシグナルを標的とした実験をおこなうための、実験スケジュールを確立する。次年度は、主に行動実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで前頭前皮質に焦点を当てた実験を行ってきたが、他の脳内報酬系脳部位(側坐核、腹側被蓋野)における薬物依存形成責任因子のさらなる探索のためDNAマイクロアレイの委託実験計画を立てている。しかし、H30年度のみの助成金では、マウス、抗体や受容体拮抗薬など、他の実験を行うための余裕がなくなるため、助成金の分配が多いH29年度分の残り金額と合わせて行なう予定としたため。
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