研究課題/領域番号 |
17K15759
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
宮岸 寛子 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (30642417)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストレス / 海馬 / ユビキチンリガーゼ |
研究実績の概要 |
生体は様々なストレス刺激に対する恒常性維持機構を有している。この機構の破綻は、ストレス性精神疾患の発症に直結することが知られているが、そのメカニズムについては未だ不明なままである。本研究では、ストレス適応機構の破綻に関与するユビキチンリガーゼの同定を行う。特に、情動行動に異常が認められないストレス適応モデルマウス(適応マウス)および情動行動に異常が認められるストレス非適応モデルマウス(非適応マウス)を用いて、ユビキチンリガーゼのストレス適応機構の破綻に及ぼす役割を明らかにするとともに、ユビキチンリガーゼ抑制薬やストレス非適応モデルマウスの情動異常を改善する抑肝散がユビキチン修飾やユビキチンリガーゼの機能に及ぼす影響を検証する。以上よりユビキチンリガーゼを標的としたストレス性精神疾患の治療薬開発の可能性について個体レベルで検証することを目的とする。 本年度は、適応マウスと非適応マウスの海馬と大脳皮質を用いて、ユビキチンリガーゼの発現量の変化をWestern blot法で検討した。その結果、HECT型の1つであるneural precursor cell expressed developmentally down-regulated (Nedd) 4-2 のリン酸化体 (p-Nedd4-2) の発現量が、適応マウスの海馬において変化は認められないが非適応マウスの海馬において減少していることを見出した。一方、Nedd4-2やNedd4-1の発現は、適応マウスおよび非適応マウス海馬のいずれにおいても変化が認められなかった。そこで、非適応マウスの海馬において減少が認められたp-Nedd4-2の発現分布を免疫組織化学法で検討したところ、神経細胞において発現していることが明らかとなった。以上のことから、p-Nedd4-2がストレス適応破綻に関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の研究目的は、マウスの情動行動が変化した非適応マウスにおいて発現が変化するユビキチンリガーゼを同定し、同定されたユビキチンリガーゼが、どの細胞種において発現変化するか検討することである。本年度の検討により、非適応マウスの海馬においてp-Nedd4-2の発現が減少することが明らかとなった。また、コントロールマウスの海馬においてp-Nedd4-2が神経細胞に豊富に存在することも見出した。しかしながら、p-Nedd4-2の発現分布を検討する際に当初予定していたよりも時間を費やし、ストレス負荷した適応マウスや非適応マウスの海馬においてどの細胞種で発現変化するか検討するに至っていないため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
29年度の計画で計画通りに遂行することができなかった適応マウスおよび非適応マウスにおけるユビキチンリガーゼの細胞腫ごとの発現変化を速やかに検討する。また、これまでに抑肝散は非適応マウスの情動行動の異常を改善し、海馬においてexcitatory amino acid transporter (EAAT) 2発現量の減少を抑制することを見出している。そこで、抑肝散投与が平成29年度の解析で同定されたユビキチンリガーゼの発現変化に及ぼす影響をWestern Blot法により検討する。また、ユビキチンリガーゼの活性化に及ぼす影響(活性化を抑制するか否か)を明らかにするため、抑肝散投与により非適応マウスの海馬におけるユビキチン化EAAT2の発現レベルが変化するか免疫沈降法を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
非適応マウスの海馬で変化が認められたユビキチンリガーゼの発現分布を検討することに苦慮し、適応マウスや非適応マウスを用いたユビキチンリガーゼの発現分布の検討まで至らず免疫組織化学用の試薬や消耗品の購入費が少なくなったため。次年度は、適応マウスや非適応マウスを用いてユビキチンリガーゼがどの細胞腫において発現変化するのか検討するため、当初予定していた通り免疫組織化学用の試薬や消耗品を購入する予定である。
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