研究課題
自閉スペクトラム症(自閉症)は神経発達障害の一つである。自閉症の中核症状は、社会性相互交流の障害であり、コミュニケーションや対人相互関係に困難を有するが病態や根本的な治療法は明らかではない。自閉症の発症メカニズムとして、遺伝的要因が中心に調べられているが、薬剤曝露などの後天的な要因も示されてきた。そこで本研究は、後天的要因によって生じる社会性行動障害の病態解明のために、妊娠12.5日のマウスにバルプロ酸あるいはエタノールを投与し、仔マウスの行動への影響を調べると共に、GABA阻害剤を同時投与した際の影響を検討し、2つのモデルの興奮性及び抑制性ニューロンを組織化学的、分子生物学的に解析することを目的とする。当該年度は、行動解析の検討を引き続き実施した。昨年度までに、バルプロ酸及びエタノール投与マウスは社会性行動の障害を示すことを示した。各薬剤胎生期投与マウスに対するピクロトキシン投与による社会性行動障害への影響は見られなかったので、再度、投与タイミングを検討し直したところ、両マウスとも社会性行動障害の改善が示された。このため、現在これらのマウスの脳を回収し、組織化学、分子生物学な解析に向けて準備を行っている。一方で、ピクロトキシン投与そのものによりマウスの社会性行動障害が示されることを新たに見出した。これらの結果は、薬剤曝露による胎生期の興奮/抑制のバランスの破綻が社会性行動障害の要因となることを示唆している。
3: やや遅れている
前年度に比べて、マウスの出産状況が安定し、行動解析の収束の目処がついてきた点は計画通りに進んでいるが、引き続き匹数の追加を行うことと、組織や分子解析のパイロット実験を開始する時期としては当初計画より遅れているので、やや遅れていると判断した。
今後は、ピクロトキシン投与によるマウスの行動解析の再現性を確認するために個体の追加を行う。バルプロ酸及びエタノール投与マウスに関しては、組織や分子解析の実験を進めていく予定である。現在、抗体やプライマーの探索、検討などを順次進めている。
当初計画より計画がやや遅延したことにより、妊娠マウスの購入、抗体やプライマーの購入が必要なため、再計上した。また、得られた研究成果の一部を発表するための旅費、学会参加費として再計上した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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