<培養細胞を用いたタンパク質の定量> 初年度において、申請者は、まず培養細胞を用いた検討を行い、HER2、HER3の発現量の異なる乳がん細胞株を用いて作製した切片について、免疫染色法により蛍光ナノ粒子で標識し、蛍光1粒子イメージングでHER2、HER3の局在や発現量の定量を行った。最終年度では、さらにこれらの培養細胞の一部について、スフェロイドを作製して切片化し、組織様の構造体にした場合のHER2/HER3の局在の変化について詳細に定量することができた。また、担癌マウスを作製し、形成した腫瘍の切片においても同様の染色を行ったが、マウス組織を染めるのに適した抗体がなく、定量には至らなかった。 <蛍光エネルギー移動を利用した二量体形成量の定量評価> また、申請者は初年度においてHER2/HER3ヘテロ二量体を、独自に開発した蛍光ナノ粒子間のFRET現象を利用する技術によって検出できることを見出している。本年度は、さらにこの物理現象が正しくダイマーを検出しているのかを明確にするため、蛍光粒子間距離をコントロールしたサンプルを用いて、エネルギー移動の効率について検討を行った。蛍光顕微鏡観察およびTEMによる観察を組み合わせることで、蛍光粒子間の距離が100nm以内に収まった場合にのみ蛍光エネルギー移動が起きることまでは判明したため、概ねダイマーを形成した場合にのみエネルギー移動が起きていると示唆される。ただし、蛍光のドナーとなる粒子とアクセプターとなる粒子が1対1で対応していない輝点や、ダイマーを形成せずに近傍に存在するだけの粒子が一部検出されたため、これらを統計的に除いて評価する方法を検討する必要がある。 <病理サンプル> 病理サンプルにおけるダイマー評価については、検討に足る十分な結果が得られなかったので、引き続き条件を精査する必要がある。
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