質量分析による血清ビタミンD代謝の包括的評価

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K15768
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 石毛 崇之 千葉大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (30757315)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 1α,25-dihydroxyvitamin D / LC/MS/MS / Immunoextraction

研究実績の概要

ビタミンDは骨代謝や免疫調節に関連した様々な作用を持ち、その不足は乳幼児の骨疾患だけでなく、成人の免疫性疾患、悪性腫瘍などのリスクとも関連するため、代謝物を含めた精確な定量が必要である。ビタミンD代謝物は分子構造によってその生物学的活性が大きく異なり、代謝動態の正確な評価には精密定量法の構築が不可欠である。本研究ではビタミンD代謝物の精確な定量の為に、LC/MS/MS による高精度ビタミン D 代謝物分析法を構築することを目的とする。加えて、ビタミン D 代謝や生物学的活性にはビタミン D 結合蛋白質、ビタミン D 受容体、各種水酸化酵素などの遺伝子多型も密接に関与している為、これらビタミン D 代謝関連遺伝子の遺伝子多型解析を含めた包括的なビタミンD代謝動態の把握を目指す。本年度は、血清・血漿中の活性型ビタミンD[1α,25-dihydroxyvitamin D; 1,25(OH)2D]を定量するため、LC/MS/MSによる分析法の構築およびバリデーションを行なった。検体前処理法にimmunoextractionを用いることで、濃度の非常に低い1,25(OH)2Dを効果的に濃縮することができた。構築した方法について、採血管の違い、溶血・乳び・リウマチ因子、保存温度といった解析に影響を与える要因について検証を行ない、いずれも1,25(OH)2D分析には影響を与えないということを確認した。また、1,25(OH)2Dは従来法であるRIAではLC/MS/MSに比べて高値傾向を示し、抗体のみによる検出では交差反応によりその他のビタミンD代謝物を測り混んでいる可能性が示唆された。これらの結果について、英文誌（査読あり）に発表した（Clin Chim Acta. 2017; 473: 173-179）。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の計画通り、LC/MS/MSによる1,25(OH)2Dの分析法を構築することができた。現在、次年度の計画である、ビタミンD代謝関連遺伝子の多型についてデータベースを用いて検索を行い、最初にビタミンD結合蛋白質(GC)の遺伝子多型解析を行っていく予定である。

今後の研究の推進方策

ビタミン D 代謝関連遺伝子の多型解析方法の構築を行う。ビタミンD結合蛋白質(GC)には近接した箇所に2つの遺伝子多型が存在する。それらを同時にタイピングする為、融解曲線分析を用いたhigh-throughput genotypingの構築を検討している。

研究成果

• [雑誌論文] Variant in C-terminal region of intestinal alkaline phosphatase associated with benign familial hyperphosphatasaemia (2018)
  • 著者名/発表者名: Ishige Takayuki、Itoga Sakae、Utsuno Emi、Nishimura Motoi、Yoshikawa Masaharu、Kato Naoya、Matsushita Kazuyuki、Yokosuka Osamu、Nomura Fumio
  • 雑誌名: Journal of Medical Genetics 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: 10.1136/jmedgenet-2017-104964
  • 査読あり
• [雑誌論文] Assessment by Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry of the Effects of Preanalytical Variables on Serum Peptidome Profiles Following Long-Term Sample Storage (2018)
  • 著者名/発表者名: Tsuchida Sachio、Satoh Mamoru、Umemura Hiroshi、Sogawa Kazuyuki、Takiwaki Masaki、Ishige Takayuki、Miyabayashi Yui、Iwasawa Yuuya、Kobayashi Sohei、Beppu Minako、Nishimura Motoi、Kodera Yoshio、Matsushita Kazuyuki、Nomura Fumio
  • 雑誌名: Proteomics Clinical applications 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: 10.1002/prca.201700047
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Surveillance evaluation of the standardization of assay values for serum total 25-hydroxyvitamin D concentration in Japan (2018)
  • 著者名/発表者名: Hiroshi Ihara, Sachiko Kiuchi, Takayuki Ishige, Motoi Nishimura, Kazuyuki Matsushita, Mamoru Satoh, Fumio Nomura, Mine Yamashita, Isao Kitajima, Naoko Tsugawa, Toshio Okano, Kouichi Hirota, Masakazu Miura, Masayuki Totani, Naotaka Hashizume; on behalf of the Nutrition Division, Japan Society of Clinical Chemistry
  • 雑誌名: Annals of Clinical Biochemistry 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: 10.1177/0004563218765570
  • 査読あり
• [雑誌論文] Improved sensitivity of serum/plasma 1α,25-dihydroxyvitamin D quantification by DAPTAD derivatization (2017)
  • 著者名/発表者名: Ishige Takayuki、Satoh Mamoru、Ogawa Shoujiro、Nishimura Motoi、Matsushita Kazuyuki、Higashi Tatsuya、Nomura Fumio
  • 雑誌名: Clinica Chimica Acta 巻: 473 ページ: 173～179
  • DOI: 10.1016/j.cca.2017.08.033
  • 査読あり
• [雑誌論文] Rapid Discrimination between Methicillin-Sensitive and Methicillin-Resistant <i>Staphylococcus aureus</i> Using MALDI-TOF Mass Spectrometry (2017)
  • 著者名/発表者名: SOGAWA KAZUYUKI、WATANABE MASAHARU、ISHIGE TAKAYUKI、SEGAWA SYUNSUKE、MIYABE AKIKO、MURATA SYOTA、SAITO TOMOKO、SANDA AKIHIRO、FURUHATA KATSUNORI、NOMURA FUMIO
  • 雑誌名: Biocontrol Science 巻: 22 ページ: 163～169
  • DOI: 10.4265/bio.22.163
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 架橋化核酸を用いた高感度サンガー法によるRAS遺伝子変異解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 石毛崇之、糸賀栄、松下一之
  • 学会等名: 第66回日本医学検査学会
• [学会発表] 遺伝学的検査の実例 (2017)
  • 著者名/発表者名: 石毛崇之
  • 学会等名: 第66回日本医学検査学会
  • 招待講演
• [学会発表] 基準値設定へ向けたビタミンD代謝物測定 (2017)
  • 著者名/発表者名: 佐藤守, 石毛崇之, 小川祥二郎, 戸村円, 山出史也, 西村基, 松下一之, 下条直樹, 東達也, 野村文夫
  • 学会等名: 第42回日本医用マススペクトル学会年会
• [図書] Advances in Clinical Chemistry, Volume 83 (2018)
  • 著者名/発表者名: Gregory Makowski
  • 総ページ数: 246
  • 出版者: Academic Press
  • ISBN: 978-0-128-15207-2
• [図書] 臨床化学検査技術教本 (2017)
  • 著者名/発表者名: 日本臨床衛生検査技師会
  • 総ページ数: 304
  • 出版者: 丸善出版
  • ISBN: 978-4-621-30175-3
• [図書] ここが知りたい 遺伝子診療 はてな？BOOK (2017)
  • 著者名/発表者名: 野村文夫、羽田明、長田久夫
  • 総ページ数: 308
  • 出版者: 中外医学社
  • ISBN: 978-4-498-00852-6