• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

侵襲性無莢膜型インフルエンザ菌の全ゲノム解析による感染メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15769
研究機関千葉大学

研究代表者

真下 陽一  千葉大学, 大学院医学研究院, 技術専門職員 (90422253)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードインフルエンザ菌 / 侵襲性感染症 / 無莢膜株 / 全ゲノムシーケンス / 次世代シーケンサー
研究実績の概要

これまでに侵襲性感染症症例として患者の血液または髄液から分離された無莢膜型のインフルエンザ菌(NTHi)株28株、非侵襲性感染症症例として肺炎患者の喀痰から分離されたNTHi株10株、健常保菌者の上咽頭より採取・分離されたNTHi株10株について、次世代シーケンサーPacBio RS IIおよびSequelを用いてシーケンスデータを取得し、ソフトウェアHGAPを用いたde novo assembleにより配列長1.79~1.98Mbpの全ゲノム配列を決定した。
このうち、侵襲性感染症症例のNTHi株14株において、long readであるPacBioによるシーケンスデータと、short readであるイルミナ社MiSeqによるシーケンスデータの比較を行った。PacBioではいずれも1本のcontigが構築されたのに対し、MiSeqでは24~83本のcontigが構築され、全配列長はPacBioのものよりも29.8~48.0kb短かった。両データを用いたhybrid contigを構築し、これを正確な全ゲノム配列と定義すると、PacBioのみのcontigでは0~25bpの差があり、その多くはhomopolymerのミスマッチであった。一方、MiSeqのcontigではhybrid contigと比較すると19~55のcontigが構築されなかった領域(gap)が存在しており、相同性の高い領域や繰り返し配列が原因で正確な配列を決定できていないことが分かった。PacBioによる全ゲノム配列の決定では、homopolymerの配列は正確に決定しにくいものの、相同性の高い領域や繰り返し配列も正確に決定できることが確認できた。
現在、侵襲性感染症症例と非侵襲性感染症症例および健常保菌者より分離したNTHi株の全ゲノム配列の比較を行うことで、侵襲性に関わる因子を同定する解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

計画では、2年で100例程度の全ゲノム配列データの取得を目指すということであったが、実際には48例の全ゲノム配列データの取得にとどまっており、やや遅れていると言える。ただ、本研究で最も重要となる侵襲性感染症例のNTHi株については、収集済みのほとんどの株について、ゲノム配列データを取得できている。全ゲノム配列データの取得に関しては、よりハイスループットに取得することができる実験系を今年度は確立できており、また、菌株については単離・保存済みのものが多数あるため、必要に応じて、さらに全ゲノム配列データを取得することは可能である。侵襲性感染症症例より分離されたNTHi株28株の全ゲノム配列間にはかなりの多様性があることが分かったため、単純に共通する配列から侵襲性に関わる因子を特定することが難しいと考えているが、非侵襲性感染症例および健常保菌者より分離されたNTHi株と比較することでそれらと共通しない配列を抽出し、その上で侵襲性感染症症例について菌株の情報および診療情報(感染症発生時期や発生地域、薬剤耐性、発症年齢、基礎疾患の有無など)を用いてグループ化することでグループごとにその部分に共通性がないかを探索している。

今後の研究の推進方策

侵襲性感染症症例より分離されたNTHi株28株の全ゲノム配列にかなりの多様性が見られたため、単純に共通する配列から侵襲性に関わる因子を特定することはできていないが、非侵襲性感染症例および健常保菌者より分離されたNTHi株と比較することにより、目的とする侵襲性に関与する因子の同定を進めていく。また、遺伝子ごとに欠失の有無やvariantの情報などを整理し、生物型による分類を行う。これと菌株の情報および診療情報(感染症発生時期や発生地域、薬剤耐性、発症年齢、基礎疾患の有無など)とを合わせて、株間の共通性を整理することにより、どのように感染が広がっていったのか、株がどのように変異を獲得していったのかなどの情報が得られるかどうかについても検討する。
今後の予定としては、現在取得済みの全ゲノム情報および紐付けされた菌株の情報および診療情報を整理し、NTHi株の侵襲性に関与する因子などを同定することを試みる。その過程で必要に応じて新たに他の株の全ゲノム配列データを取得することも検討する。侵襲性に関与する因子の同定の成否にかかわらず、結果をまとめて論文を投稿することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

データ解析に時間を要しており、期間を延長したため。引き続き解析を行った後、結果をまとめて論文を投稿することを目指しているため、論文投稿にかかる費用と、追加で実験が必要になった場合の試薬消耗品代として使用する。

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi