研究課題/領域番号 |
17K15770
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安本 篤史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90769887)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超高速液体クロマトグラフィー / エイコサノイド |
研究実績の概要 |
超高速液体クロマトグラフィー・三連四重極型質量分析計(LC-MS/MS)を用いて、ヒト血清・血漿検体を測定するための基礎検討を行った。採血から検体保存までの手技を統一して、健常人27名(男性12名、女性15名)から血清・血漿を採取し、エイコサノイド高感度一斉定量を行った。全部で176項目の活性脂質を測定することができるアッセイではあるが、30種類のエイコサノイドメディエーターについて血清・血漿検体での特徴を見出し、報告した。 次に採血条件の詳細な解析を行うために、健常人から採血管の種類、採血量、採血から遠心までの経過時間、保存条件(温度)を変えて検討を行った。血漿は採血管の種類や量には影響を受けないが、血清は採血管に含まれる凝血剤の種類や採血量に大きく依存し、遠心までの時間も1時間以内に処理する必要があった。保存も室温が最適であり、これらが統一されていないと臨床検体では正しい評価ができず注意する必要がある。現在、この採血条件による検討も投稿中である。 エイコサノイドはアスピリンの投与下では、その産生が著しく低下することは知られており、我々の予備実験でもそれが証明されている。虚血性心疾患患者を対象に、抗血小板薬内服(アスピリンやクロピドグレル)前後の血清・血漿エイコサノイド測定を行っている。現在までに40名分の結果をえており、虚血性心疾患患者では健常人よりもトロンボキサンB2やプロスタグランジンといった増悪因子が高値であり、アスピリンの投与により有意に抑制されているだけではなく、クロピドグレルを追加することで、アスピリンでは抑制できないリポキシゲナーゼ(LOX)代謝物も抑制されていることが判明した。さらに症例を追加して、次年度中に報告を予定している。本研究は東京大学大学院医学系研究・医学部倫理委員会によって承認されている[審査番号: 3722-(3), 11121]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、血漿・血清を用いたエイコサノイド高感度一斉定量法の基礎検討と好中球・血小板におけるエイコサノイド産生能の解析の2つからなる。 前者の方は、ヒト血清・血漿でのエイコサノイド高感度一斉定量法は一部で報告はあるものの、実臨床への応用に向けた報告はほとんどない。我々は実臨床への応用を主眼に置いた研究を行い、これまでに予定通りヒト臨床検体での特徴や注意する点を評価して報告してきた。虚血性心疾患患者の臨床検体の解析を順次進めており、アスピリン投与による血清・血漿エイコサノイドの変化も報告直前である。 後者の研究では好中球の精製でやや難航したものの、現在は安定した精製法を確立して、好中球と血小板の共培養系を確立した。上清中のエイコサノイド測定からも興味深い結果を得ており、前者の研究と並行して進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている前向き研究、虚血性心疾患患者の抗血小板薬投与前後の血清・血漿エイコサノイド測定は、目標症例150症例で、順調に症例が集まっており、解析を進めていく。 平成30年度は好中球と血小板のクロストークの研究に注力を注ぐ。まずは現在進めている共培養系でのin vitroの結果をまとめて、NETsの系での検討も行う予定である。
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