研究実績の概要 |
超高速液体クロマトグラフィー・三連四重極型質量分析計(LC-MS/MS)を用いて、ヒト血清・血漿検体を測定するための基礎検討を行った。採血条件によって結果に差異が生じることが判明したため、採血から検体保存までの手技を統一して、健常人27名(男性12名、女性15名)から血清・血漿を採取し、エイコサノイド高感度一斉定量を行った。全部で176項目の活性脂質を測定することができるアッセイではあるが、30種類のエイコサノイドメディエーターについて血清・血漿検体での特徴を見出し、報告した(Yasumoto A, J Chromatogr B, 2017)。 次に採血条件の詳細な解析を行うために、健常人から採血管の種類、採血量、採血から遠心までの経過時間、保存条件(温度)を変えて検討を行った。血漿は採血管の種類や量には影響を受けないが、血清は採血管に含まれる凝血剤の種類や採血量に大きく依存し、遠心までの時間も1時間以内に処理する必要があった。保存も室温が最適であり、これらが統一されていないと臨床検体では正しい評価ができず注意する必要がある。最適な採血条件をまとめて現在、投稿準備中である。 虚血性心疾患患者を対象に、抗血小板薬内服(アスピリンやクロピドグレル)前後の血清・血漿エイコサノイド測定を行った。100名分の結果をえており、虚血性心疾患患者では健常人よりもトロンボキサンB2やプロスタグランジンといった増悪因子が高値であり、アスピリンの投与により有意に抑制されているだけではなく、クロピドグレルを追加することで、アスピリンでは抑制できないリポキシゲナーゼ(LOX)代謝物も抑制されていることが判明した。現在、データを解析中で、投稿準備中である。本研究は東京大学大学院医学系研究・医学部倫理委員会によって承認されている[審査番号: 3722-(3), 11121]。
|