研究課題/領域番号 |
17K15771
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大川 龍之介 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (50420203)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 高比重リポタンパク / 多様化 / 粥状動脈硬化 |
研究実績の概要 |
高比重リポタンパク(HDL)の多様化に関わる分子機構およびその性質・機能ヘの影響を調べるために,以下の検討を行った. I.HDLと各リポタンパクおよび細胞間におけるタンパクおよび脂質転送 1.HDLとリポタンパク間の各種タンパクの転送 超低比重リポタンパク(VLDL)とHDLを反応させると,VLDL中に含まれる複数のアポリポタンパクがHDLへ転送された.また,これらの転送は,HDL3の中で比較的大きな粒子に,HDL2には均等に転送されることが明らかになった.さらに,この転送は,コレステロールエステル転送タンパクの作用によらないことを確認した.また逆にHDLから抗酸化能を有するパラオキソナーゼIがLDLに転送されることを以前われわれは報告したが,今回の研究により,LDLの機能を変化させることを見出した. 2.各種細胞(肝細胞,赤血球,血管内皮細胞)によるHDLの修飾およびその性質・機能への影響 各種サイトカインを用いたヒト肝癌由来細胞株から血清アミロイドA(SAA)が分泌される最適な条件を確立した.この条件のもと,培養上清を解析したところ,分泌されたSAAは脂質を伴うこと,apoA-Iと共存していることが示唆された.実際に炎症性疾患患者のHDLを解析したところ,炎症の増大に伴いHDLに構造に変化が表れていることを見出した.さらにHDLの構造に変化がないにも関わらず,HDLコレステロール測定には影響がないことが判明した.赤血球によるHDLへの影響に関しては,赤血球はHDLのコレステロール含有量を変化させるが,HDLの粒子サイズや電荷には大きな変化をもたらさないことが明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度分の研究予定のHDLと各リポタンパクおよび細胞間のタンパク転送は予定通り遂行し,いくつかの知見を得られた.血管内皮細胞に関しては良い結果を得られていないが,その代わり,平成30年度予定の修飾HDLの構造・機能の解析の一部を遂行することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
様々な多様化および修飾HDLが産生されることを明らかにすることができたため,計画通り,これらの性質や機能の変化について追及していく.具体的には,SAAを取り込んだHDLの構造(in vitro,in vivo),断片化apoA-Iを含有したHDL,赤血球によって修飾を受けたHDL,パラオキソナーゼ含有LDLなどの構造・機能を解析していく予定であり,予定通り研究を遂行できるものと考えている.
|