研究課題/領域番号 |
17K15773
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤原 晴美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (50643350)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不規則抗体 / 遅発性溶血性輸血副作用 / 前方向多施設共同研究 / 輸血 |
研究実績の概要 |
赤血球不規則抗体は、遅発性溶血性輸血副作用(Delated hemolytic transfusion reaction:DHTR)の原因となる。このDHTRは、死に至る重篤な反応も報告されている。安全な輸血療法を患者に提供する上で、不規則抗体の情報およびDHTRの交絡因子を詳細に研究することは重要である。現在、本邦の赤血球に対する不規則抗体研究はretrospectiveな調査が実施され、抗体保有率が把握できる(Fujihara et al. 2010)。しかしretrospectiveな研究では不規則抗体の陽転化率、DHTRの発生率を正確に把握することは難しい。さらに、DHTRの予知や予防法を確立することは困難である。このため、本研究では不規則抗体のprospectiveな多施設共同研究を計画している。初年度は、計画に沿って次の研究を実施した。 1.本研究概要の紹介:多施設共同研究の参加施設を募集するため、日本輸血細胞治療学会で、本施設で実施している輸血後の不規則抗体の前方向研究の方法・結果とその重要性について発表をした。 2.抗CD38抗体治療による不規則抗体検査への影響と解決策の構築:多発性骨髄腫の治療薬として認可が下りた「ダラツムマブ」を使用すると、不規則抗体検査の間接抗グロブリン試験が偽陽性となる。このため、ダラツムマブが輸血検査に与える影響・機序について、研究した。 3.多施設共同研究用の研究要項案(プロトコール)の作成:前方向多施設共同研究を実施する際の問題点を抽出し、プロトコール案を現在作成している。 4.本施設での輸血後の不規則抗体産生に関するprospective研究の実施
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗CD38抗体治療による不規則抗体検査への影響と解決策の構築:多発性骨髄腫の治療薬として認可が下りた、ダラツムマブを使用すると不規則抗体検査の間接抗グロブリン試験が偽陽性となる。多施設共同研究を行うために、輸血検査に与える影響・機序についての検討や検査手順の統一が必要となった。 多施設共同研究用の研究要項案(プロトコール)の作成:RhD陰性患者にRhD陰性RBCを輸血すると、抗Dを産生する症例が本邦で多く報告されている。これは、RhD抗原が極少量発現しているDEL製剤の輸血が原因として挙げられる。このため、本研究でRhD陰性患者の抗D産生とDEL製剤使用の関係性についても調査していくこととした。プロトコールは現在、改訂中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.浜松医科大学「IRB」で承認を受ける。 2.不規則抗体調査研究グループ、全国大学病院輸血部会議・技師研究会から参加施設を募集し、施設の登録をし、各施設の「IRB」で承認を受け、pilot共同研究を開始する。 3.参加施設の背景(病床数、RBC輸血患者数、単位数、不規則抗体検査方法の情報等)を調査する。 4.該当患者に本研究の目的と意義に関して説明し、研究への同意を文書で得た上で症例登録を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究のプロトコールに対し、RhD陰性患者の抗D産生とDEL製剤使用の関係性の調査を追加するよう有識者から助言があった。プロトコールの改訂は現在実施中である。さらに共同研究を開始する前に、抗CD38抗体治療による不規則抗体検査への影響についての検討が必要となり研究が遅延した。このため初年度は、共同研究用に確保した検査費用、パソコンとデータ解析ソフト、研究で使用するIC用のタブレットの購入が不要となり次年度使用額が生じた。 (使用計画) 今年度より、共同研究が本格的に始動する。このため、研究費は検査用試薬、自動分析装置用の消耗品、試験管等の実験機器、登録者用の配付資料用、IC用のタブレット、パソコンとデータ解析ソフト用に充てる予定である。また、輸血・検査に関する新規情報収集、本研究の説明と参加施設募集の案内のための学会参加にも研究費を使用する予定である。
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