研究課題
赤血球不規則抗体は、遅発性溶血性輸血副作用(DHTR)の原因となる。このDHTRは、死に至る重篤な反応も報告されている。安全な輸血療法を患者に提供する上で、輸血後の不規則抗体の発現およびDHTRについて調査することは重要である。現在、本邦の不規則抗体研究はretrospectiveな調査が実施され、抗体保有率が把握できる。しかしretrospectiveな研究では不規則抗体の真の陽性化率、DHTRの発生率を正確に把握することは難しい。このため、本研究では不規則抗体のprospectiveな多施設共同研究を計画している。最終年度は、計画に沿って次の研究を実施した。1.赤血球製剤輸血後の不規則抗体の発現に関するパイロット試験の最終結果を纏めた(Fujihara et al. 2019)。パイロット試験では、輸血が及ぼす不規則抗体発現に関する研究を実施する上で、安全性や倫理面で障害となる事項は認められなかった。全国大学病院輸血部会議でパイロット試験の最終結果と本研究の実施の意義を説明し、本研究への参加施設を募集した。2019年度末までに各施設の「IRB」で承認を受け、9施設が参加し、355例を登録している。2.本研究は介入を伴わない研究であるが、有識者からの助言を基に大学病院医療情報ネットワークの公開登録システム(UMIN000036980)に登録し、多施設共同研究用のプロトコールを改訂した。併せて研究説明用の補助資料を作成し、参加施設に配付した。3.抗CD38抗体治療による不規則抗体検査検査に与える影響の評価方法について検討した。CD38の発現量の客観的評価は、凝集の目視判定やフローサイトメトリーよりもnon-isotopic antibody binding assayが優れていることが明らかとなった。今後、多施設共同研究を続け被検者数を増やしていくことで、本邦における不規則抗体の真の陽性率、輸血量と陽性化率の関係、DHTRの発生要因が明らかになっていく。
すべて 2019
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Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy
巻: 65(5) ページ: 810-816
https://doi.org/10.3925/jjtc.65.810