研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎,クローン病,健常人の各10人の血清サンプルを用いて2555種類のmicroRNAの発現プロファイリングのパイロットスタディーを行い、炎症性腸疾患と健常者の2群間でmicroRNAのプロファイリングは階層的クラスタリングにより明確に異なることを同定した。潰瘍性大腸炎群とクローン病群を比較したクラスター解析では、潰瘍性大腸炎群において有意に上昇していたのはmiR-204-3p, miR-6803-5p,有意に減少していたのは、miR-1199-5p, miR-4745-5p, miR-4725-3p, miR-3621であった。特にmiR-204-3pにおいて顕著な差を認めた。近年Liquid biopsyとしてのmicroRNAの研究は重要視されている。炎症性腸疾患の鑑別、病勢の判定に関与する血清中バイオマーカーとしてのmicroRNAが同定できれば、治療方針(薬剤の選択)の決定に大いに寄与すると考えられる。さらに、そのmicroRNAの研究は、創薬開発を目指したバイオ産業の基盤技術となる可能性がある。今回、潰瘍性大腸炎とクローン病の2群間では複数のmicroRNAに差を認め、特にmiR-204-3pにおいて顕著な差を認めたが、このことは、同microRNAが新しいバイオマーカーとなり得、また創薬開発にも寄与する可能性を秘めていると思われる。
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