研究課題/領域番号 |
17K15777
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
相原 正宗 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (30748843)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリアmRNA / Poly(A) / ATP |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアはATPを産生する主要な細胞小器官として様々な細胞機能に影響を与えている。これまでの研究で老化やパーキンソン病など種々の疾患でミトコンドリア機能の低下に伴うATP産生能低下が指摘されており、ミトコンドリア機能の評価は病態の進行や予後など臨床上有益な情報をもたらす可能性を有している。ミトコンドリア機能の評価は単離したミトコンドリアの呼吸鎖活性をもって行っているが、筋肉組織の採取に伴う高い侵襲性や作業者間での測定再現性に乏しい等の理由から、現状では一般的な検査になり得ていない。申請者はミトコンドリアDNAから転写されるmRNAのPoly(A)はATPを基質として伸長されることに着目し、呼吸鎖活性が減弱しATP量の低下したミトコンドリア内ではmRNAのPoly(A)が短縮し、このPoly(A)の短縮がミトコンドリア機能を反映するマーカーになり得るとの仮説を立てた。本年度はミトコンドリアmRNAにPoly(A)を付与するMTPAPをノックダウンする実験条件の確立やMTPAP過剰発現細胞株等を樹立した。これらの細胞ではノーザンブロッティング法によりPoly(A)の伸長・短縮に起因するミトコンドリアmRNAの分子量増減が認められており、これら細胞をPoly(A)の伸長・短縮におけるコントロールとして用いることができることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. ミトコンドリアmRNAのPoly(A)伸長・短縮モデル細胞の樹立:ミトコンドリアDNAに由来するmRNAはホモ2量体を形成したミトコンドリアポリAポリメラーゼ(MTPAP)によりPoly(A)が付加されている。ミトコンドリアmRNAのPoly(A)伸長・短縮モデルとして、MTPAPノックダウン細胞における実験条件の確立、及びインタクトなMTPAP、あるいはドミナントネガティブ効果のある変異を導入したMTPAPの過剰発現細胞株等を樹立した。MTPAPノックダウン細胞において、Poly(A)の短縮に伴うミトコンドリアmRNAの分子量の明瞭な減少をノーザンブロッティング法により認めたため、今後これらの細胞をコントロールとして用いる。 2.ミトコンドリア機能障害モデル細胞の樹立:ミトコンドリア機能として、ミトコンドリアDNAの複製、ミトコンドリアDNAの転写、ミトコンドリア内翻訳、タンパク質分解、電子伝達系に大別し、それぞれの機能に関与する遺伝子のノックアウト細胞あるいは一過性ノックダウン細胞、または薬剤性によるミトコンドリア機能障害細胞の条件検討に着手した。 3. ミトコンドリアmRNAにおけるPoly(A)の伸長・短縮の簡易検出:ミトンドリアmRNAのPoly(A)の伸長・短縮について、単一遺伝子のmRNAのPoly(A)長を簡易的に検出するアッセイ系の構築に着手したところである。Poly(A)のハイスループット解析の前段階として簡易的なアッセイ系を使用することで、ミトコンドリア機能障害モデル細胞におけるPoly(A)の伸長・短縮の暫定的な評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア機能障害モデル細胞を複数株作製し、ミトコンドリアDNA定量、呼吸鎖複合体活性等を指標としてミトコンドリア機能を測定し、その機能不全を段階的に評価する。 またミトコンドリアmRNAのPoly(A)長を簡易的に検出するアッセイ系を構築し、MTPAPノックダウン細胞やミトコンドリア機能障害モデル細胞におけるミトコンドリアmRNAのPoly(A)長を簡易的に測定し、ミトコンドリア機能とPoly(A)について暫定的な評価を行う。 ハイスループットなミトコンドリアmRNAのPoly(A)解析に向け、既に確立した細胞からのミトコンドリアの迅速単離法を応用し、これらの作業に伴うミトコンドリアmRNAの安定性について評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は既存の試薬、細胞株を使用する範疇で実験可能であったこと、また次年度において使用予定の実験試薬等の消耗品あるいは実験機器の購入額が高く、次年度に使用することが望ましいと判断したため。
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