研究課題
SFTS感染症の診断に使用可能な免疫血清学的な測定法を開発するため、現在までに以下の研究を実施した。2017年度までに①SFTSの核蛋白質(NP)を大腸菌発現ベクターに組換え、大腸菌で組換え蛋白質を発現させた。②この組換え蛋白質を用いてウエスタンブロットを実施しSFTS既往患者血清の全例からNPに対する特異抗体が検出し、患者抗体の検出に使用できることを確認した。③精製した組換えNPを抗原にしたdouble antigen ELISA法を作成し、SFTS感染初期より経時的に採取した数例の血清について調べた結果、感染初期よりNPに対する抗体が検出され、SFTSの診断に有効な可能性を示した。④さらに組換えNPを免疫源としてウサギに免疫して、アフィニティ精製抗NP抗体の精製も成功した。2018年度はこの精製NP蛋白およびアフィニティ精製ウサギ抗NP抗体を用いてdouble antigen immunochromatography assayを作成した。この方法を用いることでSFTS患者の時系列血清から回復後のみならず、急性期においても抗体が検出されることが判明し、RT-PCR法と組み合わせて用いることで、患者の診断に寄与できる可能性が示された。また本方法はベッドサイドで簡便に検査を行うことができ、さらにdouble antigen法は動物種を選ばないため、疫学調査にも有用である可能性がある。これらのことから、宮崎大学より特許の申請を行った。またアフィニティ精製ウサギ抗NP抗体を用いて患者血清中のウイルス蛋白(抗原)の検出が可能かどうかについても基礎的な検討を開始した。以上の通り当初の研究計画どおり進行している。
2: おおむね順調に進展している
SFTS患者の抗体検出法として、組換えSFTS抗原を作成し高い特異性を有する高感度の抗体測定法を確立した。本法は臨床応用に十分耐えうると考えられる。さらに同じ組換え抗原を用いてベッドサイドで実施可能なdouble antigen immunochromatography assayも開発した。
本研究で開発したSFTS抗体検出法が臨床応用可能か多数例のSFTS患者血清で検証する。また、近年野生動物およびイヌやネコのようなペット動物からもSFTSウイルスが検出されており、人への感染も問題となっている。本研究で開発しているdouble antigen法は2次抗体を使用しないため様々な動物種に応用可能であり、動物を対象とした測定も検討中である。
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