IgA 腎症(IgAN)は、その約4 割が末期腎不全に至る予後不良の疾患であるが、未だその病因は解明されていない。これまでに多数の報告で、粘膜免疫異常の関与が強く示唆されているが、粘膜免疫に中心的な役割を果たす腸内細菌叢の、IgANにおける解析がほとんどなされていない。今回我々は、世界初となる、ヒトIgAN患者を対象とした腸内細菌の16SrRNA 遺伝子を網羅的に解析することにより腸内細菌叢の構成を明らかにしたうえで、T 細胞制御異常との関連解明に挑む。この解析は、IgANの『腸腎関連』からの病因解明に重要であるばかりではなく、腸内細菌叢をターゲットとしたワクチン療法など将来的なIgANの根治治療への発展が期待できる。 本年度は慢性腎臓病患者の腸内細菌叢解析を施行した結果、ファーミキューテス(Firmicutes)門が最も優勢であり、ついで順にプロテオバクテリア(Proteobacteria)門、バクテロイデス(Bacteroides)門であることが判明した。また、腸内細菌叢に深く関与するとされているサイトカインであるIL-10、IL-17、IL-22、TGF-βを慢性腎臓病患者約40名を対象に測定した。IL-10(pg/mL)は検出限界以下から61.68まで、IL-17(pg/mL)は検出限界以下から1.846まで、IL-22(pg/mL)は検出限界以下から129.5まで、TGF-β(pg/mL)は8143から50835までの範囲で検出された。現在、さらなる解析を行っている。
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