研究課題/領域番号 |
17K15788
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
宮武 和正 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00777435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疼痛の非薬物治療 |
研究実績の概要 |
自己多血小板血漿(PRP)は血小板に含まれる様々なanabolic factorを血液から分離することで得られる。一般のクリニックでも遠心機さえあれば施行できるほど簡便であることが最大の利点である。また自己血漿のみしか使用しないことから安全であり、倫理的な問題点もないことも知られている。その効果としてはPRP自身がgrowth factorのカクテルであるため細胞増殖、組織修復、抗炎症作用など様々な効果が報告されている。その利点と効用から膝関節症の分野においても、現在多く日本で施行されているヒアルロン酸の関節内注射よりも疼痛改善や日常生活動作(ADL)の改善につながることが報告されている。しかし臨床的に一定の効果が認められている一方で、基礎的な分野における機序の解明は未だ多くが不明である。その原因としては先ほど利点であると述べた簡便さがゆえに、臨床応用がされてしまい基礎的なメカニズムの解明が遅れてしまっていることがあげられる。我々は過去に投与するMIAの濃度を変化させることで滑膜の急性炎症—消退が観察されるモデルと、時間とともに滑膜の線維化と関節軟骨の退行変性の進行が観察される慢性炎症モデルの実験条件の確立を行った。さらに行動学的解析(von Frey Hair Test, Hot Plate Test、Incapacitance Test)との相関を解析した。このMIAモデルラットに対してPRPの関節内注射を行い、疼痛抑制に対する多角的な評価とそのメカニズムを解明することが本研究の目的である。当該年度においてはPRPの精製並びに、MIAモデルラットに関節内注射を行い、疼痛緩和作用が確認できた。現在当該ラットの組織学的評価を行い、関節内組織の変化を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験系は、関節を展開することなく注射にて関節内に確実にMIA並びにPRPを注入する必要がある。ラットの関節腔は容量30-50μlと小さいため、手技的な脱落を抑止する工夫が必要である。また、実験の開始からデータ取得(組織学的解析の完了)までに長期の期間を必要とすることも考慮して研究計画を実行していくことを常に考えるべきと考えている。当該年度において、現在組織学的解析を行っている最中である。次年度中にはこの実験結果の解析を終了できると考えており、計画よりは少々遅れているが、概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
MIA関節炎モデルにおける急性期膝関節内組織及びL4DRGの詳細な組織学的解析-MIA注射後に生じる滑膜の変化(炎症性細胞の動態)を組織学的に詳細に解析し、PRP注射による変化と比較することで、疼痛抑制におけるPRPの標的の同定を行う。 MIA関節炎モデルにおける急性期膝関節内組織の遺伝子発現の解析-MIA、PRP注射後に滑膜を採取し、ターゲットと考えられた標的の遺伝子発現の変化を解析する。 PRPは一般的に臨床応用されている白血球の濃度によって分類された3種類のPRPがあることが知られている(pure-PRP、leukocyte poor(LP)-PRP、 leukocyte rich(LR)-PRPの3種類)。今年度は動物実験においてPRPに疼痛抑制効果がある知見がえられたが、今後は種類の違いによって疼痛抑制効果並びに組織学的な所見に差異があるのかを同様のMIAモデルを利用して解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラット購入費以外の必要経費に関して、組織学的解析が当該年度に終了できず、結果として次年度に繰越となっていることで、差額が生じている。
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