本研究では、歯科診療時に散見される鎮痛薬の効果の少ない難治性の異所性疼痛において、炎症性サイトカインの分泌に関与するNFκB p65について、シグナルカスケードの詳細を明らかにすることを目的とする。また、NF κB p65の選択的阻害薬であるWithaferin Aを用いて異所性疼痛の抑制し、新たな異所性疼痛の治療方法の確立を目指す。 1)オトガイ神経損傷後異所性疼痛の発症と、NFκB p65のリン酸化の関与について、モデルラットを用いて機械的逃避行動試験および免疫染色、さらにWestern blot解析を用いて検討した。結果として、オトガイ神経切断後、機械的逃避行動試験において異所性疼痛は発症しており、慢性化していた。また、オトガイ神経切断後、各タイムポイントで脳サンプルを採取し、ウエスタンブロットを行ったところ、NFκB p65のリン酸化が異所性疼痛発症時に相当するタイムポイントですべて亢進していた。さらに、疼痛発症はオトガイ神経切断24h後から発現していたため、このタイムポイントで免疫染色を行ったところ、p38およびNFκB p65のリン酸化の局在はそれぞれIba1であるマイクログリア、GFAPであるアストロサイトに分在していた。 2)Withafein Aの髄腔内投与の効果について機械的逃避行動試験を用いて検討した結果 、Withaferin Aによって鎮痛効果が示された。その鎮痛効果に関する分子メカニズムを解析するため、対照群を有効濃度10倍希釈群と、生理食塩水群でウエスタンブロットにて比較したところ、p38およびNFκB p65のリン酸化が異所性疼痛時亢進していたのを、naive群程度に抑制することが示された。また炎症性サイトカインであるIL-18においても同様の動態を示した。
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