研究課題/領域番号 |
17K15793
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
高山 靖規 昭和大学, 医学部, 講師 (60711033)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 相互作用 / 鎮痛剤 / 天然資源 |
研究実績の概要 |
感覚神経に発現するTRPV1(カプサイシン受容体)が活性化するとそれに続いてアノクタミン1(カルシウム活性化クロライドチャネル)も活性化する。これをTRPV1とアノクタミン1の相互作用という。TRPV1とアノクタミン1は痛み神経に発現しており、これらが単独で活性化しても痛みを感じるが、相互作用が発生するとそれよりもずっと強い痛みが引き起こされる。そこで、本研究ではこの相互作用が炎症時にどのような挙動を示すのか検討した。炎症時のTRPV1は弱い刺激によっても活性化する。今までは、これが通常では痛みを感じない程度の刺激であっても痛みを感じてしまうメカニズムであると考えられてきた。そこでTRPV1を人為的に炎症状態とする実験を行なった。その結果、通常では反応しない程度の刺激でTRPV1とアノクタミン1が相互作用した。この際、TRPV1自体の活性化は僅かであったがアノクタミン1は強く活性化した。このことは、炎症時に悪化する痛みを引き起こしている主役が実はアノクタミン1であることを示唆している。 それでは、このような痛みを抑えるにはどうしたらよいだろうか。効果的な手段はアノクタミン1の活性化を抑えることである。これまでの申請者の研究においてメントール(ミントなどに含まれる清涼物質)がアノクタミン1を強く阻害することは判明していた。今回さらに検討をした結果、これまで見つかっていたものよりも強力にアノクタミン1を阻害する天然化合物を同定した。この天然化合物には刺激性がない。メントールは高濃度になると痛みを生じさせることがある。そのため、今回見つかった天然化合物はよりよい鎮痛薬の開発へと繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、TRPV1とアノクタミン1の相互作用が炎症状態においてどのように働くのかを調べるだけの計画であったが、今回この相互作用をさらに強力に抑制する新規天然化合物の同定に至った。さらに今回見つかったものは既報と照らし合わせても最も相互作用に対する影響が強く、刺激性もない。そのため、高濃度で塗布したとしても痛みを取り除くだけで目立った副作用な無いものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
痛みには、皮膚をつねった時に感じる痛み、唐辛子を食べた時のヒリヒリする痛み、氷水に手をつけた時にジンジンする痛みなどいくつか種類がある。これらの痛みの受容体はすでに報告されているが、特に興味深いことは、今年になってTACANというつねった時の物理的な刺激を直接受容するタンパク質が同定された。今回、申請者は実験系に新たに細胞をガラス管で突いて物理的に刺激する装置を組み込んだ。そこで、今後は他の受容体も含め、新規に同定した天然化合物の薬理作用を痛みを中心に検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により参加予定であった第97回 日本生理学会大会(大分、3月)が誌上開催となった。この学会における情報収集は本研究を遂行する上で必要であった。そのため、当該助成金は翌年度の学会に参加するために使用する予定である。
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