研究課題
FDG-PET検査の画質は装置の性能によって差が生じる。全国の施設で同じ診断能を持つことが理想であるが、それは現実的でない。自施設の画質を把握することは、その施設の検査の限界を把握するために必要である。従来は取得するカウント量から画質評価を行っていたが、画像を再構成するアルゴリズムの進歩およびハードウェアの進歩によって同じカウント量でも画質が大きく異なるようになった。そのため、読影医が目にする再構成された後の画像において高精度な画質評価指標が必要となる。前年度では、本研究課題で提案する手法に、ヒトの視覚的注意を引き起こす特性(顕著性)を組み込むことの有用性が示唆された。そこで、本年度はシミュレーション実験およびファントム実験を行い顕著性を算出するプログラムのパラメータの最適化を行った。シミュレーション実験はファントム実験の事前検討として行い、ファントムおよびターゲット信号のサイズやカウントの目安を決定した。ファントム実験はアクリル製の直方体容器によって作成し、薬剤が比較的安価なため同じ核医学分野の検査(SPECT)によって画像を取得した。これらの画像から視覚評価、従来の画質評価指標(コントラストやバックグラウンド領域のノイズ)、顕著性を算出しそれぞれの相関係数を求めた。その結果として、顕著性は従来の画質評価指標と同等以上の精度を持っていることが明らかとなった。これらの結果は学会にて3演題に分けて発表した。
3: やや遅れている
PET画像とCT画像のピクセル値の両方を用いた画質評価を提案していたが、体動や個人差による影響が大きく精度の点で優位性が見られなかった。そこで、新しい指標(顕著性)を組み込むことに着手したが、異なる分野の指標であるため背景(人の視覚の成り立ち)から顕著性計算アルゴリズムの理解に多大な時間を要した。
データの収集、ソフトウェアの使用方法の理解およびパラメータの最適化は完了しているため来年度は論文化を行い結果を広く公開する。
期待したよりも下回る結果が得られたことで、手法の改善が求められた。そこで、他分野の技術を使用することで目的(精度向上)の達成を試みた。しかし、専門外の分野の技術を習得するにあたって必要となる学習が増え、研究の進捗に遅れが生じた。本来であれば国際学会での学会発表を予定していた。次年度では学会発表を積極的に行い旅費にて残額の使用を予定している。
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Radiological Physics and Technology
巻: 13 ページ: 98-103
10.1007/s12194-019-00548-0