研究課題
本研究の目的は、ホウ素中性子補足療法 (BNCT) において、病巣の形態や重要臓器との位置関係を考慮し、患者個別に中性子ビームを最適変調することで、正常組織の被ばく線量を低減可能にする、中性子ビーム制御フィルタシステムの開発である。本年度の研究計画は、3Dプリント可能なハイドロゲル材料に対する中性子減衰特性の評価、及びハイドロゲル材料の組成を調節した場合の中性子減衰効率の変化の評価である。本年度我々は、ハイドロゲル材料の組成調節に関する研究打合せ、中性子ビーム照射実験、中性子ビームの体系を計算機上でシミュレーション可能なモンテカルロ計算システムの構築を行った。先ず、ハイドロゲル中のクレイ濃度を変化させた試料を複数種類試作し、形状、造形精度、強度などの物理的評価を行った。加えて、CT撮像した際のCT値の均一性評価や、MRI撮像した際のMR信号の取得実験を実施した。水分含有量を変化させることで、MR信号も変化させられることを明らかとした。更に、緻密な形状を3D printingするための新しいサポート材の開発と評価を行い、血管レベルの微細な中空構造まで造形できることを確認した。ハイドロゲルの組成に対し、中性子反応断面積が高く、付随的に発生するガンマ線が少ない質量数6のリチウムの含有率を高める組成調節試験に着手した。中性子照射実験では、ラジオクロミックフィルムを用いて、多層的に中性子線量分布を計測した。それらの測定データを用い、実機に合致するシミュレーション体系の最適化 (コミッショニング) に着手した。
3: やや遅れている
実験施設とのスケジュール調整が遅れ、施設利用時間の確保が困難であったため、予定の中性子照射実験が十分に行えなかった。一方、シミュレーションに関しては、予定を前倒で進めることができたため、計画よりやや遅延している項目もあるが、おおむね順調に進展している。
研究協力者と密に連携し、ハイドロゲル材料に対して中性子照射実験を実施し、ハイドロゲル組成の最適化を行う。更に、それらを用いて中性子ビーム制御フィルタの最適化計算法の創成に着手する。
本年度、消耗品費として計上していたデータ解析用ソフトウェア及び線量測定用X線フィルムの購入を、研究の進捗から判断し次年度に先送りしたことが理由である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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