研究課題/領域番号 |
17K15805
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
菅 博人 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (80789305)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 定量的磁化率画像 |
研究実績の概要 |
Quantitative Susceptibility Mapping (QSM)は脳内の主に鉄の分布を反映する磁化率をMRIで直接求める方法であり,様々な疾患へ応用が検討されている.QSMはPhase unwrapping,Background field removal,Dipole inversionなど複雑な計算の過程を経て,磁化率を得られるが,それぞれの手法によって生じる誤差が伝播して,値が変動することがしばしば起こる.また現在のゴールドスタンダードであるマルチエコーのグラディエントエコーシーケンスを使用したQSMは励起パルスの空間的な不均一性の影響を受けにくいが,撮影時間が長い欠点がある.一方,シングルエコーシーケンスでは撮影時間が短い反面,前述の影響によって画質が劣化する.そのため,新たな画像処理手法の開発や短時間撮影時における画像劣化を抑える処理が重要となる. 磁化率画像の推定をより正確に行うために新たなBackground field removal,シングルエコーシーケンスのための再構成手法および,神経変性疾患などへの臨床応用を見据えた脳の形態解析と磁化率の解析を同時に行えるシーケンスの開発および画像処理手法の開発の3点を行った.具体的にはシングルエコーシーケンスであるPrinciples of echo shifting with a train of observations シーケンスやGradient echo echo-planar-imagingを用いることで高速撮像が実現し,従来法と差がないことを確認した.それに加え,シングルエコーシーケンス特有の励起パルスの空間的な信号ムラの影響を小さくする画像処理法の開発も行った.3DT1強調像と磁化率画像を同時に得る方法を考案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進んでいる. 研究計画当初に予定していたR2スターマップを使用したQSM再構成法はR2スター値が脳表や頭蓋底付近の磁場の不均一の影響を受けて値が安定せず,作成したQSM画像はストリークアーチファクトが多数,発生したため他の手法の開発に着手した. 正確なQSM解析を行うための手法および高速撮像法に適した画像解析法の作成に成功し、それぞれ論文投稿を行っている.さらに神経変性疾患への臨床応用を見据えた形態および磁化率を同時に解析できる手法を作成した.この手法は高分解脳内温度測定に適応できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
QSMのより正確な手法の開発は引き続き,行っていく.今後予定している脳内温度イメージングはQSMから推定する予定であるので,画像処理開発がうまくいけば温度イメージングの画像も改善されることが期待できるからである. 本研究の最終目標である脳の高解像度の温度イメージングは磁化率画像の温度依存性についてファントムを用いた実験を行い,そこからモデルの確立を行う.温度を変化させながらQSMから得た磁化率、実測したファントム内温度とリファレンスとなるMagnetic Resonance Spectroscopyや拡散強調画像などによって得られた温度との対比を行う予定である.また今後の温度イメージングの手法を臨床応用できるか,その可能性も加味した手法の開発およびより適したパルスシーケンスの選定も同時に行っていく.
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