研究課題/領域番号 |
17K15805
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菅 博人 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (80789305)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MRI / 定量的磁化率画像 / 温度依存 |
研究実績の概要 |
Quantitative susceptibility mapping (QSM)は,MRI撮影時に取得される位相画像からいくつかの複雑な計算を経て,磁化率値を推定する.この磁化率値は主に 脳内の鉄沈着の程度を評価できることから世界的に研究が進められている.2018年度はsuperparamagnetic iron oxide(SPIO)の濃度を変化させたファントムを使って,内部の温度を可変させながらQSMを撮影した.2019年度に解析した結果,定量的磁化率画像によって得られる磁化率値が温度に依存していることを発見した.さらに同時に計測できるT2スター値も同様に温度に依存していたが,磁化率値が温度によって変化した割合はT2スター値よりも小さいことも同時に分かった.したがって体温が変化する人体における鉄沈着等の評価はT2スター値よりも磁化率値のほうが優れていることが分かる. また温度と磁化率値の関係は一ピクセル内に含まれる鉄濃度によっても変化するため,温度に換算するためには,2回以上の撮影が必要になる.本発見については,論文投稿中である.
2回の撮影間の位置合わせによって生じる位置ずれなどの問題は,2018度開発したQSMとVoxel-based Morphometry(VBM)を同時に行う手法によって解決できると考えている.この手法では磁化率画像とT1強調画像を同時に撮影することができるため,異なるタイミングで撮影された画像の剛体位置合わせや標準脳への変換などは容易に行える.なお,この手法については2019年度に論文掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画当初の目的はほぼ達成し,ファントムを利用した本研究はすでに論文化し投稿中である.しかし定量的磁化率画像の値は変化しないという計画当初の想定をはずれている.ファントムを利用した研究では限界があり,より正確かつ生体に応用が可能な温度と磁化率の関係を調べるためには生体もしくは,生体に近いものを利用した検討が必要である.その可能性を探るべく,研究期間の延長申請を行った.
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今後の研究の推進方策 |
ファントムを利用した温度と磁化率の関係の論文が通り次第,生体もしくはそれに近いものを選定して,実験と解析を行う.同時にファントムの結果との整合性を確認したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
ISMRM2019への出張報告時に航空会社(エアーカナダ)からの領収書発行に半年かかり,航空券代を私費で支出しているため,次年度使用額が生じた. 英文論文校正やファントムの選定に利用する.
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