研究課題/領域番号 |
17K15809
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
山下 剛範 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10410937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タウリン / タウリントランスポーター / 8-OHdG / 8-nitroguanine |
研究実績の概要 |
放射線による細胞損傷をタウリンが調節する分子機構を明らかにするという観点より、当初はタウリントランスポーター活性/ 制御因子を検討する予定であった。しかし放射線曝露後のタウリン投与が小腸組織以外の組織におけるタウリントランスポーター発現に影響を与えるか不明であり、さらに組織中のDNA損傷を抑制するかを先に明らかにするべきであると考え、平成30年度は、1) 放射線曝露モデルマウスにタウリンを投与し腎組織タウリントランスポーター発現変化への影響を検証する。2) 放射線曝露後のタウリン投与により酸化DNA損傷マーカーである8-OHdG発現およびニトロ化DNA損傷のマーカーである8-nitroguanine発現に与える変化を病理組織学的に検証する。以上2点によりタウリントランスポーター発現の量的変化と放射線による細胞損傷緩和に与える影響を明らかにすべく、マウスを用いて病理組織学的分析を行った。 昨年明らかにした小腸組織同様に腎組織においても放射線曝露によるタウリン局在およびタウリントランスポーター発現の低下抑制が確認できた。さらに放射線曝露後のタウリン投与により8-OHdG発現および8-nitroguanine発現増加が抑制された。このことからタウリン投与は、4.5Gy照射による酸化およびニトロ化DNA損傷を抑制することが明らかとなった。さらにこの発現増加抑制は先に得られた放射線曝露によるタウリン局在およびタウリントランスポーター発現の低下抑制と一致した。タウリンは、タウリントランスポーターを介して細胞に取り込まれ臓器損傷に対して回復効果を有していることから、タウリントランスポーター発現の維持が放射線による酸化およびニトロ化DNA損傷緩和を調節するカギとなることが示唆された。この研究結果の一部はAdv Exp Med Biolに投稿し掲載決定している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年報告した小腸組織と同様に腎組織でも放射線曝露後のタウリン投与により組織タウリントランスポーター発現低下が抑制されることを明らかにした。この研究結果は国際学術雑誌に発表済みである。また放射線曝露後のタウリン投与は、小腸組織の酸化DNA損傷およびニトロ化DNA損傷を抑制することが明らかとなった。さらにこの損傷抑制は先に得られた放射線曝露によるタウリン局在およびタウリントランスポーター発現の低下抑制と一致した。タウリントランスポーター発現の維持が放射線による酸化およびニトロ化DNA損傷緩和を調節するカギとなる可能性を示した。実験、分析が順調に進んだため、今後も国内外の学会にて研究発表を行う予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
放射線曝露後のタウリン投与によるタウリントランスポーター発現の維持が、放射線による酸化およびニトロ化DNA損傷緩和を調節するカギとなることが示唆された。そこで、本年度は放射線曝露後のタウリン投与がタウリントランスポーター発現の量的変化をもたらす機構の解明を行う予定である。そのため、1)放射線曝露後のタウリン投与によりタウリントランスポーター活性/ 制御因子であるTNF-αおよびNF-κBがタウリントランスポーター発現を調節するのかを病理組織学的に解析する。2)放射線曝露後のタウリン投与により核内の転写活性因子であるp53がタウリントランスポーター発現を調節するのかを病理組織学的に解析する。以上の2点を解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、当初予定していたタウリントランスポーター活性/ 制御因子についての検討ではなく、放射線曝露後のタウリン投与が酸化DNA損傷マーカーおよびニトロ化DNA損傷のマーカー発現に与える変化の評価を確認することが適切であると判断した。このため、タウリントランスポーター活性/ 制御因子の評価に用いる抗体の購入は見送った。今年度はタウリントランスポーター活性/ 制御因子について検討を行う予定である。この計画において遺伝子レベルでの変化も確認することも視野に研究を進める計画もある。当初の研究計画よりも、遺伝子発現分野へのかなり踏み込んだ状況になっており、解析に必要な機器、ソフト、ハード両面へ資金が必要になる。
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