放射線による細胞損傷は、活性酸素種(ROS)産生に関連する。ROSの産生は、NF-κBの活性化によるTNF-α、IL-などの炎症性サイトカインが原因である炎症に基づくプロセスを含むことが知られている。 本研究は、放射線による細胞損傷をタウリンが調節する分子機構を明らかにするという観点より、放射線誘導性炎症関連因子であるTNF-αおよびNF-κBがタウリントランスポーター発現を調節するのかを検討した。 令和1年度は、1) 放射線曝露モデルマウスにタウリンを投与しTNF-αとタウリントランスポーター発現に与える変化を検証する。2) 放射線曝露後のタウリン投与によりNF-κBとタウリントランスポーター発現に与える変化を検証する。以上2点によりTauT発現の量的変化と放射線による細胞損傷緩和に与える影響を明らかにすべく、マウスを用いて病理組織学的分析を行った。 放射線曝露後のタウリン投与によりTNF-α発現は抑制された。しかしNF-κB発現には大きな変化が認められなかった。このことからタウリンは、小腸でのTNF-αの発現を抑制することにより、放射線誘導性細胞損傷を緩和する可能性が示唆された。さらにこの発現増加抑制は先に得られた放射線曝露によるタウリン局在およびタウリントランスポーター発現の低下抑制と一致した。タウリンは、タウリントランスポーターを介して細胞に取り込まれ臓器損傷に対して回復効果を有している。TNF-α発現の抑制がタウリントランスポーター発現の維持を調節するカギとなることが示唆された。
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