研究課題/領域番号 |
17K15814
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
今道 祥二 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40761599)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中性子線 / 放射線生物学 |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)、陽子線・重粒子線治療は高い治療奏効性を示しつつ開発されてきた。これらの粒子線を用いる治療は光子線とは異なる、特定の深さ位置によるエネルギーの放出や分布を用いている。しかし、立体分布し深さを有する組織への放射線照射による生物学的線量と物理学的線量による評価は十分ではない。そこで、本研究では深さ方向による位置依存的影響や立体分布した細胞集団の一部及び全体の影響を評価することとした。実験では細胞実験によるコロニー形成法、MTT法、微小核発生頻度等の方法に加えて、アポトーシスアッセイや蛍光染色から損傷の程度及び初期応答・晩期応答、そして時間推移に伴う損傷の程度を調べることとした。本年度は当初、平面培養細胞に対するX線、BNCT、陽子線等の細胞生存率の取得(基準データ取得)と、照射面の照射方向からの深さ位置による細胞生存率を取得するに取り組むことを計画した。前者については、近畿大学原子炉での中性子線照射及びガンマ線照射による細胞生存率及び微小核発生頻度から基準データの取得に取り組んだ。その他の中性子線・陽子線等の照射は各照射施設の利用及び申請の問題から未だ行えていないが、近く照射実験に取り組む予定である。後者の、深さ位置による細胞生存率の取得について現在、研究を進めているところである。深さ位置に対応する器具の作成に取り組んでおり、完成し次第様々な放射線照射を行い細胞損傷の影響評価に取り組む。これまでの研究から得られた結果について、日本放射線影響学会第60回大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度には基礎データの取得と照射面の照射方向からの深さ位置による細胞生存率の取得に取り組む予定であった。しかし、陽子線・重粒子線等の利用が十分にできず、その分のデータの取得が遅れている。また、必要な器材の準備と改良に取り組んでいるため、その器材を用いての実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に予定していた実験を含めて、深さ位置による放射線の影響評価を生物学的指標から求める。また、放射線線量の測定にも積極的に参加し、生物分野のみならず物理分野など他分野のグループとも積極的に連携を図りたい。 今年度はより積極的な国際学会・国内学会での発表、論文投稿に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
様々な放射線の使用を計画しており、いくつかの施設を利用しての中性子線・陽子線・重粒子線の照射実験が計画通りに遂行できなかった。また、計画していた器具の作成に時間がかかっており、平成29年度中には完成しなかった。平成30年度には中性子線等の照射実験に取り組み、器具の作成を完了させ、本研究を遂行する。
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