ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)、陽子線・重粒子線治療は高い治療奏効性を示しつつ開発されてきた。これらの粒子線を用いる治療は光子線とは異なる、特定の深さ位置によるエネルギーの放出や分布を用いている。しかし、立体分布し深さを有する組織への放射線照射による生物学的線量と物理学的線量による評価は十分ではない。そこで、本研究では深さ方向による位置依存的影響や立体分布した細胞集団の一部及び全体の影響を評価することとした。実験では細胞実験によるコロニー形成法による細胞生存率の測定、アポトーシスアッセイによる照射後早期の影響評価、DNA損傷応答マーカーであるγH2AXを指標とした蛍光免疫染色で損傷の程度を評価した。3次元培養培地を用いて、立体分布させた状態の細胞に対して中性子線照射を行った。その結果、深さ位置依存的な細胞生存率の傾向が確認された。アポトーシスアッセイでは線量依存的な影響が少ない傾向がみられた。照射位置を高精度で求めるために、IMRTによる局所照射による蛍光免疫染色では照射位置の確認ができなかった。その原因として、後方散乱線による影響、培地中での散乱の影響などが考えられ、これらを避けるために照射治具の改良を検討する。ゲル線量計中を用いた、生物学的線量と物理学的線量の関係性を調べたが、ゲル線量計では低線量の検出が困難であり検証は行えなかったが、高線量の照射ではゲル線量計での検出を行うことができた。今後、ホウ素を含むゲル線量計、及び低線量の検出が可能なゲル線量計の必要性が示唆された。
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