研究課題/領域番号 |
17K15818
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山崎 圭子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (60732120)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | AD/HD / 行動抑制機能 / 事象関連脳電位 / Go/No-go課題 / 有機フッ素化合物 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
AD/HD(Attention deficit hyperactivity disorder)は注意の不全を中心とする発達障害であり,授業中に立ち歩きを我慢できないなど,日常生活で行動を抑制できないことによる困難が多い。この行動抑制については有機フッ素化合物(PFAAs)曝露による悪影響が指摘されている。そこで本研究では,脳活動のわずかな遅延や減弱を客観的に捉えることが可能な指標である事象関連脳電位(ERP; Event-related brain potentials)を用いて,行動抑制機能とPFAAs曝露との関連性を明らかにする。 平成14年に開始した前向きコホート研究「環境と子どもの健康-北海道スタディ」への参加母児20,929組のうち,同意が得られた児のERP測定を行った。ERPは行動抑制を測定するための典型的課題状況であるGo/No-go課題を用いて測定を行った。さらにAD/HDのスクリーニング検査であるADHD-RSを行い,AD/HD傾向のデータも収集した。 本年度は、前年度に行った予備測定に基づき、本測定を実施した。当初の計画に従い、PFAAsとの関連に先立って、ERPのP3, Nogo P3, N2などと参加者の属性およびADHD傾向の関連について解析した。ADHD-RSによりADHD傾向が高いと分類された児については、Nogo P3振幅が減衰した。また、不注意傾向が高いと分類された児については、N2振幅が減衰した。行動抑制機能を反映するERP波形が、ADHD傾向の高さと関連することが確認できた。今後の解析で、AD/HDの症状として捉えられている行動抑制機能不全の原因のひとつが環境化学物質による影響であることが示されれば,これまでと異なる視点からのAD/HD障害像の理解と,今後の発症予防に役立つと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、本測定として150名の測定を目標としていたが、昨年度から合計して138名の測定にとどまり、目標数にはわずかに届かなかった。原因として、施設の使用状況が混み合っており、測定予約が思うように設定できなかったという事情がある。解析については、高性能のコンピュータを導入したことにより、当初の予定どおり進捗した。ERPの個人波形を分析し、波形の振幅と潜時の計算を行い、それらのデータと参加者の属性およびADHD傾向との関連について解析を行った。参加者の属性、特に父母の教育歴や喫煙との関連が示されたことから、今後データ数を増やして再確認を行った上で、これらの要因を今後の解析における調整要因として用いる方針を立てた。また、抑制機能を反映するとされるERP波形がADHD傾向と関連することが示され、本研究の前提となる仮説が確認された。そのため、測定人数はやや少ないが、全体としては順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度前半は可能な限り測定を行い、データ数を確保する。そのうえで、年度後半については詳細な解析とデータの取りまとめを行う。まず、これまでの解析で示された結果を、データ数を増やして確認する。さらに、そこで得られた結果をもとに、最終目標である有機フッ素化合物(PFAAs)曝露とERP,またはPFAAsとADHDの関連について解析を行い、AD/HDの症状として捉えられている行動抑制機能不全の原因のひとつが環境化学物質による影響であるか否かについて考察を行い、最終的な成果の発表へとつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規に高性能コンピュータを購入したが、その際に行った前倒し申請の残金が次年度使用額となっている。今年度前半は、残額で可能な限り測定を行う。後半には解析および結果のまとめを行う予定である。
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