研究課題/領域番号 |
17K15830
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
阿部 遥 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (90554353)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガボン / ウイルス / 系統樹解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、ガボン共和国における熱性疾患の大規模な患者サンプルを用いて、デング熱を始めとする熱性ウイルス感染症の迅速検出および患者情報の疫学的解析を行い、ウイルス感染症流行に深く関与する生活・環境因子を明らかにすることを目的としている。平成29年度には、(1)等温迅速検出法による効率的なウイルス検出法の開発、(2)大規模ヒトサンプルを用いたウイルス検出とウイルス遺伝子配列の系統樹解析を計画した。(1)において、等温迅速検出法としてLAMP法(Loop-mediated isothermal amplification)を応用して検出法の開発を行った。標的ウイルスのゲノム配列の中から大多数の系統で保存されている配列を探索し、各ウイルスごとにLAMP検出用プライマーを設計した。各標的ウイルスのリファレンスRNAを用いて検出感度および特異性を測定した結果、数十~数百コピーのウイルスゲノムを検出できる感度および十分な特異性を示すプライマーセットを設計することができた。(1)の等温迅速検出法開発と同時に、(2)におけるヒトサンプルを用いたウイルス検出実験としてリアルタイムPCR法によるウイルスゲノムの検出を行った。その結果、複数のヒトサンプルが標的ウイルス陽性の反応を示した。そこで、ウイルス陽性サンプルからウイルスゲノムをRT-PCRにより取得し、シークエンス解析を行った。その後、解析で得られたウイルスゲノム配列を用いて様々なリファレンス株の配列とともに系統樹解析を行ったところ、検出されたウイルスがアフリカ株のクラスターに属することが判明した。さらに、ガボン国内におけるウイルス感染状況について興味深い示唆も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、(1)等温迅速検出法による効率的なウイルス検出法の開発、(2)大規模ヒトサンプルを用いたウイルス検出とウイルス遺伝子配列の系統樹解析を計画していたが、各項目ともにおおむね計画通りに進展していると考えられる。(1)において、等温迅速検出法としてLAMP法(Loop-mediated isothermal amplification)を応用した検出法の開発を行っているが、LAMP法ではプライマー設計が大変重要となっており、特異性や検出感度に直接的に影響を与える。本研究では微量のウイルスゲノムを検出できる感度および十分な特異性を示すプライマーセットを設計することができており(1)は順調に進展している。(2)においては、ウイルス陽性ヒトサンプルからウイルスゲノムをRT-PCRにより取得し、シークエンス解析および系統樹解析まで行うことができており、系統樹解析からガボンでのウイルス感染に関する興味深い考察が得られている。したがって、項目(2)についても順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は(1)検出結果と患者情報、および進化系統解析結果を総合した疫学的解析、(2)ウイルスの分離と病原性・性状解析を予定している。まず、平成29年度に行ったウイルス検出および系統解析の結果とサンプルを提供した患者の情報を照合し、患者の年齢・性別・居住地域・家族構成・職業・食生活・行動範囲などの様々な視点から疫学的な解析を行い、ウイルス感染症と有意に関連する生活・環境因子を特定する。患者情報は連携研究機関が保持しており、情報開示請求を行うことで取得可能である。また、ウイルスの分離・性状解析については、すでに現地で細胞培養システムを立ち上げており、計画通りに遂行できる見通しである。以上から、平成30年度も研究計画通りに研究を遂行できるものと考えられる。
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