蚊が媒介するウイルス感染症の拡大防止は、発展途上国における公衆衛生上の大きな課題となっている。特にアフリカ諸国においては、デング熱の感染拡大の懸念や黄熱病の再流行などにより適切な診断技術が必要とされているにもかかわらず、正確な罹患状況を把握できていないのが現状である。本研究では、アフリカのガボン共和国における熱性疾患患者検体を用いて、蚊媒介性ウイルス感染症の検出技術を開発するとともに、検体の解析結果に基づく疫学的解析から、ウイルスの由来、地域性、罹患率等の疫学的情報を明らかにすることを目的としている。 本研究では、アフリカにおいて感染拡大が懸念されている蚊媒介性感染症(デングウイルス、黄熱ウイルス等)について、解析機器の整備が不十分な現地施設でも使用できる検出技術を開発した。研究代表者は核酸の等温増幅法を応用し、各ウイルスに特異的なオリゴDNAを設計して感度・特異性の高い検出法を開発することができた。開発した検出法および既知の検出法を組み合わせて現地患者検体を解析した結果、ガボンではほとんど報告のない血清型のデングウイルスを検出した。さらに、デングウイルス陽性および陰性患者の年齢・性別情報を解析し、成人検体からのウイルス検出が9割を超えていることを明らかにした。これらの結果は、ガボンにおいてデングウイルス感染リスクが存在することを示すとともに、現地医療機関・研究機関にデング熱が流行していることを認識させるための重要な報告であり、現地研究機関にすでに報告されており、研究機関からガボン全土へ情報が伝わることでデング熱に対する適切な診断・処置が促進されることが期待される。
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