研究課題/領域番号 |
17K15833
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
綾仁 信貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90777939)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬剤性有害事象 / 薬剤関連エラー / 高齢者介護施設 / 医療安全 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたるH29年度より、介護老人保健施設2施設(合計200床)と特別養護老人ホーム(合計80床)において、薬剤性有害事象(ADE)および薬剤関連エラー(ME)を正確に測定するための調査フォームおよび調査プロセスを用い、全介護記録の網羅的レビューによるコホート調査を実施した。現地にて研究者および研究補助員によりレビューを行い(1次レビュー)、収集されたADEおよびMEが疑われるイベントを、複数名の医師による独立したレビュー(2次レビュー)と、全医師による最終評価(3次レビュー)により妥当性の検証を行う方法とした。調査対象者はH28年08月01日からH29年07月31日までの1年間に調査対象施設に入所していた入所者のうち、ショートステイでの利用者以外の者であり、期間内の調査対象者は計459名で、入所期間の合計は3315人月であった。H30年12月15日に全調査対象者の1次レビューが完了し、潜在的なイベント総数は1562件であり、うちADEは364人に対して1402件、MEは160人に対して599件発生しており、MEを伴うADE(予防可能なADE)は100人に439件認められた。1次レビューの段階での入所100人月あたりのADEおよびMEの頻度は、それぞれ42.3、18.1であり、これは米国での同一方法論の調査の約4倍の頻度であったが、この頻度は現在実施中の2次レビューにより低下すると考えられる。H31年04月時点では医師4名による2次レビューを行っており、全1562件のイベント中、596件(38%)の2次レビューが完了した。R1年08月頃に2次レビューを完了させ、その後の3次レビューを経てデータをフィックスした上で、R1年度末までの論文化を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年12月15日時点で、最終的に固定された調査対象者459人、3315ヶ月に対する1次レビューが完了し、ADEおよびMEの候補となりえる潜在的なイベント全1562件が抽出された。このレビュー作業と平行して、調査対象者の背景情報、潜在的イベントに関する情報、調査対象者に対して投与された全薬剤に関する情報のそれぞれについてデータベース入力を行い、H31年04月時点で、これらのデータベースへの入力作業もほぼ完了している。H31年01月より2次レビューを開始し、H31年04月までの間に全体の約40%にあたる596件の2次レビューが完了しており、R1年08月頃には2次レビューが完了する予定であり、最終的な妥当性検証の段階である3次レビューを秋頃に完了させた後にデータ解析を行い、R1年の年度内の論文化と投稿を完了させることが可能であると考えている。 なお2次レビュー経過の中で、あらためて現地での追加情報収集が必要となることや、関連する情報の入力などの情報処理作業のため、調査にかかる旅費および研究補助員の謝金は研究実施前の予定を上回っているが、物品費等が予定よりも抑えられており、予算内での研究継続は可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度内で1次レビューが完了し、R1年夏頃の2次レビュー完了を目標に引き続きレビュー作業を継続するとともに、情報の入力作業も並行して行う。 2次レビューおよび3次レビューの経過の中で、あらためて現地での追加情報収集が必要となることや、関連する情報の入力などの情報処理作業のため、調査にかかる旅費および研究補助員の謝金は初年度に続き研究実施前の予定を上回ることが予想される。 調査の目的であるADEおよびMEの収集について、研究実施前にはイベント数が不十分な場合には、調査対象期間を拡大して調査対象者数を増やすことが検討されていたが、1次レビュー完了時点で1562件の潜在的なイベントが同定されており、2次レビューにおいても除外となるイベントの頻度は多くなく、ADEおよびMEを含む全イベントが1000件を超えることが十分見込めるため、調査期間を延長して調査対象者を増やす必要はないと考える。 2次レビューから3次レビューの段階においては、臨床疫学調査および薬剤性有害事象に高い専門性を有する研究協力者とのミーティングを繰り返し行い、レビュー精度の向上を図る。また同時にデータベース構築作業も継続して行い、2次レビュー完了後の速やかな解析および結果の論文化につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地での調査にかかる時間が長時間となり業務効率を上げることが困難であったことや、収集した膨大なデータの入力作業に人手を要したため、出張のための旅費、および研究補助員への謝金については当初形状していた予算を超過したが、研究補助員が現地調査における作業用にノートPC購入が必要と考え計上していた予算について、実際の調査においては現地設備の活用等により不要となったため余剰し、その差し引きにより95661円の次年度使用額が発生した。次年度以降も現地での追加情報収集や研究協力者との打合せ、および学会参加が必要であり、必要資金は旅費、謝金および学会発表や論文作成に充当する予定である。
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