本研究の初年度にあたるH29年度より、介護老人保健施設2施設(合計200床)と特別養護老人ホーム(合計80床)において、薬剤性有害事象(ADE)および薬剤関連エラー(ME)を正確に測定するための調査フォームおよび調査プロセスを用い、全介護記録の網羅的レビューによるコホート調査を実施した。現地にて研究者および研究補助員によりレビューを行い(1次レビュー)、収集されたADEおよびMEが疑われるイベントを、複数名の医師による独立したレビュー(2次レビュー)と、全医師による最終評価(3次レビュー)により妥当性の検証を行う方法とした。調査対象者はH28年08月01日からH29年07月31日までの1年間に調査対 象施設に入所していた入所者のうち、ショートステイでの利用者以外の者であり、期間内の調査対象者は計459名で、平均年齢は85.8歳で、入所期間の合計は3315人月であった。H30年12月15日に全調査対象者の1次レビューが完了し、潜在的なイベントとしてADEは1402件、MEは599件が同定された。その後医師4名による2次レビューはR01年11月04日に完了し、全員による最終チェックである3次レビューを経て、ADEは1207件、MEは600件が同定され、100人月あたりのADEおよびMEの発生頻度はそれぞれ36.4と18.1であり、米国での同一方法論の調査の3-4倍の頻度であった。転倒が全体の約40%(480件)と最も多く、MEのうち約72%(434件)が観察段階で生じていた。本結果はR03年07月に開催予定の国際学会(ISQua Virtual Conference 2021)の演題に採択されており、R03年05月中の国際誌への投稿を予定している。
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