研究課題
本研究の対象者は、研究代表者が参画している先端医療振興財団が行っている神戸市一般住民を対象とした神戸研究の都市部住民コホート研究参加者1134人である。平成22~23年度に市の広報など公募情報提供および地域自治会の協力により研究参加者を募り、ベースライン調査を実施した。以後、平成22年度参加者は平成24年度に、平成23年度の参加者は平成25年度にというように2年おきに追跡調査を継続しており、2020年度は平成23・24年度参加者の9~10年目の追跡調査を予定している。2019年度は75歳以上の対象者55人に対してThe Montreal Cognitive Assessment (MoCA)による軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)のスクリーニング及び喫煙状況・飲酒状況・サプリメント類の摂取状況・食事摂取状況・身体活動状況・労働状況・睡眠状況・服薬状況等に関する問診やLDLコレステロール(LDL-C)などの動脈硬化性疾患の危険因子を含む生化学検査を行った。また、関連研究として、吹田研究のデータを用いて、冠動脈疾患に対する高コレステロール血症の生涯リスクを評価した研究を行った。男性では45歳をindex ageとした場合、非高LDL-C群で冠動脈疾患の推定生涯リスクは13.7%、高LDL-C群では47.2%であった。一方、女性にて45歳をindex ageとした場合、非高LDL-C群では冠動脈疾患の推定生涯リスクは7.1%、高LDL-C群では10.2%であった。本研究の結果から、特に男性の高LDL-C血症は冠動脈疾患の生涯リスクに強い影響をもたらすことが示された(Sugiyama D, et al. J Atheroscler Thromb. 2020 ;27(1):60-70.)。
3: やや遅れている
研究実績の概要で述べたように、2019年度は75歳以上の対象者55人に対してMoCAによるMCIのスクリーニング及び各種問診やLDLコレステロールなどの動脈硬化性疾患の危険因子を含む生化学検査を行うことができた。今年度MoCA等の調査を完遂できた人数(55名)は当初見込んでいた90名よりも少ないものの、平成23年度の対象者数を母数とした場合の追跡率が約75%と比較的高い数字を維持できていること、また今回の追跡調査でMoCAの対象となっているのが「平成30年度の追跡調査時点で新たに75歳以上となったか、6年目の追跡調査時点で75歳以上であったがMoCAを受けなかった参加者」でかなり限定された対象となっていることを鑑みると、今回の調査人数はおおむね順当と考えられ、6年目追跡調査までのMoCA完遂者や後述する2020年度のMoCA受検予定者と合わせると150名を超える解析対象者が得られることから、認知機能をターゲットとした研究としては十分な解析対象数と思われる。しかしながら、今年度のコホート調査において台風などの天候の影響により不参加者が想定よりも増加したため、2020年度まで本研究を延長して、2020年度のコホート調査参加者も本研究の対象者としてバイオマーカーの測定等を行う方が研究の遂行上望ましいと考えられたため、今年度の研究進捗状況は「(3)やや遅れている」とした。
2019年度に引き続き、2020年度(平成31年度相当)も年8回の追跡調査を予定しており、該当する参加者にMoCAや問診、臨床検査を行う予定である。しかしながら,2020年4月現在、新型コロナウイルスの影響により少なくとも5月いっぱいまでの追跡調査を中止せざるを得ない状況であり、今年度の追跡調査が難しい場合は利用可能な保存検体を用いて各種バイオマーカー(高感度CRP、リウマチ因子・抗核抗体、n-6系脂肪酸等)の測定を行う予定である。また、2018-2019年度の調査に相当する第4回追跡調査のデータクリーニングおよびデータセットの整備間完了次第、第3回追跡調査のデータと合わせて、追跡調査におけるMoCAの結果と7~8年前のベースライン時点における古典的な動脈硬化性疾患のリスクファクター(血圧や血糖値などの古典的血清マーカー、喫煙・飲酒などの生活習慣、血圧脈波による動脈硬化進展度)とMCIの関連、及び前述の古典的なリスクファクターに炎症に関連するバイオマーカー(高感度CRP、LAB、リウマチ因子・抗核抗体、n-6系脂肪酸)を加えた場合のMCI発症予測能の改善について縦断的に検討する予定である。今年度は2019年度追跡調査によって得られた保存血清を用いた各種バイオマーカー(高感度CRP、リウマチ因子・抗核抗体、n-6系脂肪酸等)の測定を見送り2020年度まで本研究を延長することとした。その理由は今年度のコホート調査において台風などの天候の影響により不参加者が増加したため、神戸研究全体としては十分な対象者数が確保できず、保存血清の残量及び保存検体の取り扱いの関係上、別研究にて測定予定のLOX-1 系変性 LDL指標(sLOX-1、LAB)などと併せて、2020年度に測定する方が望ましいと延長申請時点では考えられたためである。
今年度は2019年度追跡調査によって得られた保存血清を用いた各種バイオマーカー(高感度CRP、リウマチ因子・抗核抗体、n-6系脂肪酸等)の測定を見送り2020年度まで本研究を延長することとした。その理由は今年度のコホート調査において台風などの天候の影響により不参加者が増加したため、神戸研究全体としては十分な対象者数が確保できず、保存血清の残量及び保存検体の取り扱いの関係上、別研究にて測定予定のLOX-1 系変性 LDL指標(sLOX-1、LAB)などと併せて、2020年度に測定する方が望ましいと延長申請時点では考えられたためである。
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J Atheroscler Thromb
巻: 27 ページ: 60-70
10.5551/jat.49098
BMC Nephrol
巻: 20 ページ: -
10.1186/s12882-019-1291-4.
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巻: 16 ページ: -
10.3390/ijerph16214151