本研究題目は,同一テーマをさらに発展させた後続科研費の採択を受けたことから,3ヵ年計画の2年目時点をもって終了することとなった. 本研究では,多くの環境要因のように,単一での健康影響は小さく,複合的・経時的な曝露が問題となる疫学研究において,曝露状況が経時的に変化するような状況に対応する統計モデルを実データに適用することを目的としたものであった.具体的には,本研究では,主に社会医学領域で提唱されてきたライフコース疫学の概念を環境疫学に持ち込み,特定の臨床仮説に対して因果図を描き,ベースライン環境要因の直接的な影響と他要因やほか時点の曝露状況を介した影響の個別推定を行うことを行ってきた.本研究計画段階でメインの適用対象としてきた妊娠期からの環境化学物質曝露の経時評価を行っている10 万人規模の出生コホート研究である「エコチル調査」は,2018年度末時点(3年計画2年目)で妊娠期から1歳時点までのデータのみを利用することができる状況であり,本研究における目的のひとつとしている経時的な対象者の変化を考慮することが困難であったため,本研究では先行して13歳までの追跡を終えている2000人規模の出生コホート研究データを研究対象データとして研究を実施した. 本研究では,妊娠中もしくは乳幼児期の生活環境と未就学時期のアレルギー疾患発症の関連評価を臨床仮説とし,計画時点に設定した2つのモデル「①曝露評価は最大で3 時点測定.結果は最終時点1 時点での発症有無の評価のみ,結果が曝露に再度は影響しない状況」と「②曝露評価も疾患の状況評価も2時点以上で経時的に評価されていて,曝露と疾患の状況が相互に影響しあう状況」の2つについてモデル化を実施し,条件付モデル,同時モデルを用いてリスク定量を行った.
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