研究課題/領域番号 |
17K15842
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
福井 敬祐 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員(移行) (50760922)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん疫学 / 統計 |
研究実績の概要 |
研究目的:がんの記述疫学研究において、罹患・死亡の経時変動分析に変化係数モデルを用いる方法がある。変化係数モデルでは、経時変動を定量的に評価するために、その要因に特定構造を仮定している。しかし、部位によってはこの仮定が成り立たない場合や、経時変動だけの分析では正しく変動を捉えきれない場合がある。本研究は変化係数モデルの経時変動要因の構造の一般化と地域性や社会経済格差等の非経時変動要因の導入による、柔軟な解析法の開発を目的とする。本研究の成果により例えば『○○県○市の年収△万~□万の××年生まれの男性喫煙者の肝臓がん死亡リスクはその他の集団に比べて○○倍である』といったハイリスク集団の特定を行うことができ、 効果的ながん対策の立案・評価に貢献できると考える。
研究計画・方法:既存の変化係数モデルの手法では出生コホート効果に特定の構造を仮定することでその効果を検出している。本研究においてはまず、上記の構造仮定以外による出生コホート効果分析手法について検討する。また同時に、地理的要因や社会経済的要因などの経時要因以外の要因の導入可能性についても研究を行う。理論構築との同時進行で、実データによる解析結果と疫学的知見の比較検討により妥当性の検証を行い、その結果を統計数理モデルの洗練に反映させる。本成果を用いることにより様々な要因の分析が可能となり、ハイリスク集団の特定等が柔軟に行えると期待される。さらに、モデルに分析した要因を組み込んだ将来予測についても検討し、がん対策推進基本計画における設定目標の確認や将来における効果的な対策の立案に貢献する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り, 先行研究で提案された変化係数モデルによるAge-Period-Cohortモデルを利用して, 大阪府がん登録データの罹患率および死亡率の分析を行った。また分析を通して, 一つの正規基底のみを導入した変化係数モデルによる分析が適用可能な場合と, 摘要不可能な場合について知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は大阪府がん登録データへ適用することで得た変化係数モデルの課題を基にモデルの改良を図る。具体的にはまず、これまでの研究成果により現時点で課題として挙げられる出生コホート効果の改良に着手する。既存手法においては出生コホート効果に特定の構造を仮定することで統計学的な検出を可能としている。本研究ではこの仮定が明らかに成り立たない部位や性別に関して既存手法とは異なる構造の仮定の可能性について研究を行う。具体的には、部位別に出生コホート効果の影響を汲み取る構造を統計理論で用いられる基底関数展開を応用して拡張する。その後、構造自体を置かないノンパラメトリック型のモデリング手法を応用することで既存手法以上に自由度の高い手法の開発を目指す。 また、実データ分析としては地理的な要因や社会経済格差要因などのような非経時変動要因の変数を使用した分析を予定している。具体的には人口動態統計調査資料や国政調査資料から大阪府の職業・産業・市区町村別死亡情報、職業・産業・市区町村別年齢階級別人口などを入手した後に、大阪府がん登録資料に登録されている市区町村コード等を用いてデータをリンケージさせることで経時要因以外の分析を行えるデータを作成し、モデリングと分析を通じて組み込むべき非経時要因を選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析時にプログラムの精密化を行ったため、分析時の負荷が高い場合でも高性能なパソコンおよびソフトの必要がなかった。次年度以降より探索的な分析が必要であり、今年度では必要のなかった高性能なパソコンが必要となる予定であるため購入費に充てたい。
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