研究課題
JMDCデータについては、加齢に伴う健診受診時血圧の推移を、混合モデルを用いて算出し、論文投稿している。この検討で、降圧薬服用者の本来の血圧(服用前の血圧)を算出するにあたり、降圧薬の影響を検討する必要性を見出した。まず、降圧薬ごとの世界保健機構が定める規定一日用量(Defined Daily Doses: DDD)を算出し、降圧治療前後の血圧変化とDDDを基準とした降圧薬の用量との関連を検討した。その結果、降圧治療前後の収縮期血圧変化率に、DDD基準の降圧薬用量は強く影響しておらず(相関係数=0.09)、一方で、単純な指標である降圧薬剤の“種類数”がより明瞭に影響していた(相関係数=0.24)。このことから、降圧薬服用前の血圧レベルを予測するためには、降圧薬剤数か他の新たな指標の利用が必要と考えられた。大迫コホート研究については、家庭血圧、家庭脈拍、血圧・脈拍日間変動の加齢に伴う血圧推移パターンを算出し、現在論文投稿中である。加齢との関連は、家庭収縮期血圧は直線的に上昇、家庭拡張期血圧は逆U字型、脈拍はほぼ直線的に低下、収縮期血圧日間変動は直線的に上昇、拡張期血圧日間変動はU字型、そして、脈拍日間変動は低下するといった傾向が認められた。上記のJMDCデータと比較すると、大迫コホート研究の血圧が高い値を示していたが、これはJMDCデータが比較的健康な労働世代を対象としているためと考えらえれる。解析と並行して、例年実施している家庭血圧測定、耐糖能検診、および頭部MRI検診を実施することで、今後の解析データの追加に貢献した。
2: おおむね順調に進展している
血圧・脈拍推移パターンに関する結果がでており、論文化まで順調に実施している。ただし、降圧薬用量の考慮や、JMDCレセプトデータに基づく疾患の定義が一部進んでいない。
JMDCデータについて、レセプトに含まれる降圧薬情報をDDDに基づいて整備することで精密なデータを創出することが難しいことが示唆されている。これはDDDが世界標準を目的としたものである一方、日本の薬剤用量は低く設定されていることが多いためと考えられる。したがって、降圧薬種類数とともに、日本の添付文書上の降圧薬用量をデータベース化し、血圧変化率への影響を検討する。降圧治療前後の血圧変化を高い精度で予測できた場合、その手法を考慮しつつ、より正確な血圧推移パターンを求める。また、引き続き、レセプト傷病名、診療行為、または服薬情報を加味した脳卒中、冠動脈疾患、慢性腎臓病、認知機能障害(認知症)の定義作成に着手し、得られた結果の妥当性を検証する。最終的に、これらの臓器障害が、臓器障害臓器障害が血圧推移に及ぼす影響を明らかにする。大迫コホート研究については、例年の調査を継続するとともに、データベース化を進める。死亡、脳卒中発症、その他各種臓器障害のデータも収集しているため、これらのアウトカム別の血圧推移パターンを明らかにする。以上について、新規モデルとしてTrajectoryモデルも考慮し、エビデンスの創出を目指す。
次年度の経費必要性を考慮し、本年度の使用を多少控えたため。今後、学会発表ならびに調査に関わる旅費等に使用し、研究成果を積極的に発信する。研究データと研究成果をバックアップするためのメディアの購入に充てる。その他、学会参加費、論文英文校正費、論文掲載費等に使用する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Circulation Journal
巻: 82 ページ: 2055~2062
10.1253/circj.CJ-17-1227
Hypertension Research
巻: 42 ページ: 120~122
10.1038/s41440-018-0133-2