研究課題
JMDCデータについては、予後とトラジェクトリーモデルを利用して、血圧推移パターンの同定を試みたが、全対象者でほぼ均一に血圧が上昇していることから、血圧推移パターンの分類ができなかった。そこで、死亡や認知機能発症と血圧推移パターンとの検討には、症例対照研究を実施した。死亡者327名(平均53.9年、男性89.9%)について、死亡日は最終健診後平均0.85年(中央値0.73年)であった。死亡者以外の全生存者を対照群とすると多変量解析では交絡要因の影響を除外しきれないと考えられたため、最終健診データの性別、年齢、body mass index、喫煙、飲酒、糖尿病、脂質異常症、降圧治療、脳卒中既往、冠動脈疾患既往、および腎臓病既往をモデルに入れた傾向スコアマッチング(1対10)で抽出した生存者を対照群とした。抽出された生存者3,270名との血圧推移を比較したところ、収縮期血圧は死亡者で有意に高かったが、最終健診時に血圧は低下し、生存者の血圧レベルとの有意差は消失した。同様に、認知症発症者174名(平均56.7歳、男性78.7%)と対照群として抽出された1,740名(平均56.9歳、男性81.2%)の収縮期血圧を比較したが、両群に有意差は認められなかった。大迫コホート研究については、継続調査を実施するとともに、加齢に伴う家庭血圧、家庭脈拍、および血圧・脈拍日間変動の推移を論文報告した。その後、ベースラインを基準とした家庭血圧の経年変化の算出により、血圧推移パターンの同定とそのパターンと予後との関連も検討したが、血圧推移パターンには降圧治療の変遷による時代効果の影響、認知機能低下をアウトカムとした場合には追跡脱落例の考慮などが必要であり、今後のさらなる詳細な検討が必要と考えられた。
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日本循環器病予防学会誌
巻: 54 ページ: 163-169
Journal of the American Heart Association
巻: 8 ページ: e012121
10.1161/JAHA.119.012121