研究課題/領域番号 |
17K15854
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
横田 理 奥羽大学, 薬学部, 助教 (70706605)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | transgenerational effect / reproductive toxicology / male germ cell / nanoparticles / brain / epigenetics / behavior / mouse |
研究実績の概要 |
本研究課題では、超微小粒子胎仔期曝露が仔(F1世代)の雄性生殖系に及ぼす影響を明らかにすること、さらに、直接曝露を受けていない孫(F2世代)の脳神経機能に及ぼす影響を明らかにすることを目指し、多世代・経世代影響に関する重要な分子マーカーを探索するべく研究に着手した。 妊娠期に超微小粒子を経気道曝露し、産まれた仔(F1世代)を成獣期まで飼育し、別の雌マウスと交配させたのち、解剖し精巣・精子をサンプリングした。次に、F2世代は3週齢時に解剖し、大脳皮質と海馬を摘出した。 まず、F1世代雄マウスの精子性状解析を行ったところ、精子の細胞死の割合並びに形態異常が曝露により多く認められた。精巣組織所見では顕著な変化は曝露により認められていないものの、詳細な定量解析を現在進めているところである。一方で、Gene chip を用いて、F2世代雄マウスの大脳皮質と海馬での遺伝子発現変化を解析したところ、海馬では行動異常に関連する遺伝子群の発現変化を網羅的に捉えた。しかし、大脳皮質では曝露による顕著な変化を認めることができなかった。すなわち、脳領域ごとで異なる結果が得られ、雄性生殖細胞系列から次世代の脳領域へのtransgenerational effect の詳細に関しては明らかにする必要がある。現在、生殖細胞のエピゲノム解析を進めており、transgenerational epigenetic inheritanceに関連し得る分子マーカーの同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超微小粒子の胎仔期曝露が仔(F1世代)の脳神経や雄性生殖に及ぼす影響について、これまで私たちを含めた多くの研究グループが報告を行っている。しかし、超微小粒子の胎仔期曝露の多世代影響については未解明のままであった。本研究では、F1世代の雄性生殖系への影響については、これまでと同様に再現性あるデータが取れた(精子性状の悪化)ことに加え、F2世代の脳神経系の遺伝子発現の変動が認められたことは、当初の計画通りの結果であるといえる。予想以上の結果としては、変動した遺伝子群の機能解析を行ってみると、行動や神経伝達物質に関連した Gene Ontology (GO) term が抽出され、F1世代で認められる脳神経機能への影響とF2世代で認められる影響が類似している可能性が考えられた。研究開始1年で以上の結果を得られたことが、当初の計画以上に進展していると判定した所以である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、F1世代生殖細胞のエピゲノム解析(マイクロRNA発現解析)を行っているところであり、抽出された分子マーカーからF2世代脳神経系の経世代影響のキーとなる重要な因子の同定を探索中である。一方で、F1世代精巣組織解析をステージ解析を含め詳細に行い、また、精子形成に関わる遺伝子発現変化を定量的リアルタイムPCRで捉え、F1世代雄性生殖系列のリスク評価を構築する。雄性生殖のリスク評価を確立することは多世代影響に対する予防の観点からも重要と考える。また、F2世代大脳皮質と海馬についてはサンプルの都合上、遺伝子発現解析分しか採取できていないが、定量的リアルタイムPCRによる確証実験を行い、マイクロアレイ解析の妥当性を検証しておく。必要であれば、初代培養系を用いて、エピゲノムを介した獲得形質の遺伝機構の解明を行うことも視野に入れている。本研究では、当初の研究目標の大半を達成しつつあり、予定には書いていないが、時間が許す限り、F2世代の雄性生殖系列の解析も行い、併せて、多世代影響の実体を示したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度から本年度になるにあたり、私の職場の異動もあり、消耗品の購入を全て行えなかったことが理由であるが、異動後、体制を整え次第、すぐに予定通りの消耗品類を購入していく。
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