研究課題/領域番号 |
17K15856
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
宮山 貴光 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20620397)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 銀ナノ粒子 / オートファジー / リソソーム / TFEB / pH |
研究実績の概要 |
銀ナノ粒子は、抗ガン剤や抗病原微生物薬など医療応用への開発が最も期待されている金属ナノ粒子である。しかしながら、細胞毒性も強いことから、医療応用への安全性を確立するために、生体内挙動と毒性発現機構を明らかにする試みがなされている。二年目の研究実施計画に従い、オートファジー・リソソーム系のマスターレギュレーターとして知られている転写因子TFEBに着目して実験を行った。通常、転写因子TFEBは、リソソームの機能を維持することで、オートファジー・リソソーム系が担う細胞内消化やprogram cell death、栄養飢餓からの生理機能維持を行うと考えられてきた。したがって、銀ナノ粒子の毒性が発揮されるためには、銀ナノ粒子が直接、TFEBの機能を阻害するためと仮定し実験を行った。リソソーム内に銀ナノ粒子が蓄積すると、pH上昇の結果、リソソーム機能が破綻する。このとき、TFEBの発現は、銀ナノ粒子の曝露濃度依存的に減少することが分かった。TFEBは転写因子として機能することから、細胞分画を行い、細胞質内と核内のTFEBの発現を調べたが、両方の画分において、TFEBの発現の減少が認められた。この結果から、銀ナノ粒子は、オートファジー・リソソーム系の機能破綻にTFEBの発現減少を引き起こして毒性を起こすとも考えられた。さらに、銀ナノ粒子の毒性とTFEBの発現との関連性を調べるため、TFEBの減少をプラスミド導入によって意図的に補充したが、オートファジーの阻害や毒性に変化は認められなかった。以上の事から、銀ナノ粒子は、TFEBの発現をも減少させ、オートファジー・リソソーム系を阻害するが、それは毒性を決定する主要なメカニズムではなく、リソソームpHの破綻に並行して起こる二次的な現象の結果であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
銀ナノ粒子の毒性メカニズムとオートファジー・リソソーム系の関連性が見出されたことから、二年目は研究実施計画に沿って、オートファジー・リソソーム系のマスターレギュレーターであるTFEBに着目して実験を進めた。銀ナノ粒子の曝露の結果、リソソーム内pHの破綻とオートファジー・リソソーム系の阻害を引き起こすが、そのメカニズムにTFEBの関連性という問題を解決するに至った。一方で、身内の体調不良により、介護の必要が生じたため、所属機関では助教ではなく非常勤講師として、研究活動を継続せざるをえなかった。そのため、当初計画の遅延が生じたことから、本年度の研究は、やや遅れていると判断し、研究期間を1年延長して研究を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、銀ナノ粒子によるリソソームpHの破綻と細胞死を制御する機構について調べることを想定している。あわせて、TFEBの減少によって生じるリソソームpHに関わる遺伝子の転写レベルも解析していく予定である。なかでも、ATP6V0E1、CTSA、CTSBなどの遺伝子は、リソソームのpH維持に関わる重要な因子として知られている。銀ナノ粒子によるTFEBの発現症の結果、これらのリソソームに関連する遺伝子の発現がどのように変化するかも調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
身内の体調不良により、介護の必要が生じたため、所属機関では助教ではなく非常勤講師として、研究活動を継続せざるをえなかった。そのため、当初計画使用額に余りが生じたが、すでに、次年度の延長申請が受理されており、引き続き、研究を遂行していく予定である。
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