研究実績の概要 |
本研究は、地域の住民組織活動(保健推進委員会などの住民活動)に着目し、活動による周囲への健康情報・行動変容の波及効果の程度や範囲を、質問票を用いた縦断調査により疫学的に検証することを目的とする。主な研究実施地域は長野県K町(人口約4,700人)とし、高血圧予防を目的とした町の保健推進委員会活動(2年任期で65人)による、住民への血圧関連知識や健康行動の波及効果を検証する。 平成29年度はまず、住民の血圧関連知識や健康行動を把握するため、ベースライン調査を実施した。質問項目には高血圧の原因や関連する疾病、血圧基準値などに関する知識、および血圧計利用などの健康行動、健康状態や日常生活などを含めた。調査は平成29年8月に実施し、町の40歳以上の住民3,181人に調査票を配布し、1,893人から回答を得た(回収率59.5%)。分析の結果、高血圧の基準値や認知症との関連、血圧測定時の適切な腕の位置などについての認知度が低いと考えられた。また、回答者の約75%は家庭血圧計を持っているが、そのうち週1日以上利用しているのは約34%程度であることがわかった。 その後、効果を検証するための保健推進委員会の活動として、平成29年12月~平成30年3月の間に、町の保健師・管理栄養士との協働により「保健推進委員を対象とした健康学習会」「高血圧予防のための啓発ツール(チラシとトイレットペーパー)の作成と各世帯への配布」「地区の集会所を活用しての健康教室開催」の事業を実施した。それぞれの活動は、ベースライン調査において認知度が低いと考えられた血圧関連知識の普及や血圧計利用促進に重点を置いた。
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