研究課題/領域番号 |
17K15861
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
戸次 加奈江 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (00722084)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イソシアネート / SVOC / 室内環境 |
研究実績の概要 |
イソシアネートは化学的な反応性の高さから様々な工業製品に利用され,一般家庭においても塗料,シール材,接着剤,断熱材といった多くの製品に使われている。そのため,イソシアネートは,家庭用品などからの放散による曝露の可能性が考えられ,ごく僅かな吸入でさえもアレルギー喘息などの健康影響を示すため,シックハウス症候群などとの関連性も懸念されている。また,準揮発性有機化合物(SVOC)に分類されるイソシアネートは,発生源から空気中に放散された後,空気中ではガス状及び粒子状で存在する可能性があるため,日常生活の中で,これらに長期的な曝露を受ける可能性も考えられる。そこで本研究では,一般の室内環境中におけるガス状及び粒子状イソシアネートを対象とした長期的なモニタリングを実施するための捕集法及び分析法を確立させ,イソシアネートによる汚染の実態を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は,主にイソシアネートの捕集法及び分析法の確立に取組んだ。その中で,誘導体化物質であるジブチルアミンを修飾した陽イオン交換樹脂とガラスフィルターを組み合わせた,空気中のガス状及び粒子状イソシアネートを対象とした新規評価法を確立することができた。本手法により,一般の室内空気を連続して7日間捕集し,分析したところ,比較的揮発性の高い5種類のイソシアネートを定量範囲内で検出することができた。検出されたイソシアネートの濃度は,それぞれイソシアン酸(6.7 ng/m3),メチルイソシアナート(1.5 ng/m3),プロピルイソシアナート(0.3 ng/m3),フェニルイソシアナート(0.1 ng/m3),ヘキサメチレンジイソシアナート(0.6 ng/m3)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度は,イソシアネートの新規捕集法を確立し,本手法により,一般の室内空気中において数種類のイソシアネートの定量に成功した。しかしながら,精度や安定性等に関する詳細データについては未だ得られていないこともあり,論文投稿に至っていない状況にある。そのため,H30年度も,昨年度に引き続き捕集法について検討を行う予定である。また,室内環境中のイソシアネートに関する発生源を調べるため,放散試験を予定していたものの,小型チャンバーの実験条件の確立に遅れが生じ,測定に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,平成30年度も,空気中イソシアネートのモニタリング方法の確立に向けた条件検討を行う予定であり,精度及び安定性等に関するデータの取得を目指す。また本手法を用い,室内で使用される建材や施工剤等を対象とした,小型チャンバーによる放散試験を実施することで,室内のイソシアネートに関する発生源の特定を目指す。さらに,平成30年度予定していたイソシアネートに関する環境中での二次生成の可能性について,対象化合物と環境中での観測例等について文献を基に情報収集し,捕集法及び分析法について検討する。これら二次生成物質についても,イソシアネートと同様,一般家庭を対象とした室内空気調査の実施に向けた準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
空気中イソシアネートの新規評価手法の検討に関して,進捗に若干の遅れが生じており,次年度は精度及び安定性に関するデータを得る必要がある。そのため,生じた使用額により,市販の空気中イソシアネート捕集用サンプラーを購入し,新規評価手法により得られる数値の妥当性について検討する予定である。
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