研究実績の概要 |
H30年度は、前年度に引き続き、空気中イソシアネートの新規捕集法及び分析法を検討した。特に、GFF_SCX-DBAカートリッジに関する分析精度及び安定性に関する評価と、実環境下における測定法としての妥当性を評価するため、TDIまたはMDIを取り扱う事業所またはウレタン吹き付け作業現場での作業環境測定を実施した。測定の結果,事業所では、対象とするイソシアネートのうち4種類(ICA,2,6-TDI, 2,4-TDI,4,4’-MDI)が検出され,取扱いのある2,4-TDI及び2,6-TDIの濃度が1.8-17 μg/m3,0.7-8.9 μg/m3と比較的高濃度であり、TDI及びMDIはいずれもGFF上で捕集された。またこのとき、市販のサンプラーとGFF_SCX-DBAカートリッジを平衡に測定し、濃度の差を確認したところ,殆どのイソシアネートが両サンプラーで同程度検出された。これにより、空気中イソシアネートの評価手法として,本サンプラーの妥当性を示すことができた。また、測定後のカートリッジの保存安定性を評価するため、測定後1週間の保存期間を設け、濃度変化を調べたところ、主にSCX-DBAから検出されたガス状成分については、殆ど濃度の変化が見られなかった。一方で、GFF-DBAから検出された、粒子またはガス状の成分については、濃度の低減が見られた。この理由として、GFF上で捕集されたイソシアネートは、GFFに含まれるDBAとの反応により誘導体化された後、時間の経過と共に分解することが予想された。そのため、測定後は、速やかに前処理を行い、分析することが望ましいと考えられた。また、目標としていた発生源特定のための放散試験についても実施済みであるものの、結果として、身の回りの建材や柔軟剤からは、イソシアン酸(ICA)以外のイソシアネートは殆ど検出されず、有害性が指摘されるTDIやMDIなどのイソシアネートに関しては、建材等から放散される可能性が低いものと考えられた。
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