研究課題/領域番号 |
17K15863
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
新杉 知沙 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター, 研究員 (30794185)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 子ども / 小学生 / 栄養不良の二重負荷 / 社会経済的要因 / 食育 / スリランカ / 母子栄養 / 国際栄養 |
研究実績の概要 |
子どもの栄養不良の二重負荷(低栄養と過剰栄養)は、国際的な公衆衛生上の課題と認識されて久しいが、効果的な改善策の開発は遅れている。学童期は、子どもの健やかな成長に重要であるだけでなく、義務教育が実施されている学校は、家庭環境によらず等しく子ども自らが適切な生活習慣を学ぶ機会を提供できる潜在的な可能性がある。しかしながら、多くの開発途上国では学校における栄養不良への対策は限られている。そこで日本の学校教育で実施されている食育に着目し、現地の社会的文脈に配慮したスリランカ版の学校食育プログラムの開発とその評価を行うことを本研究の目的とした。 平成30年度は、前年度の横断調査のデータを分析し、スリランカ都市部の子どもの栄養不良に関連する要因を検討した。痩せと過体重(肥満含む)の割合は、それぞれ19.3%、13.4%と多くの小学生が栄養不良であり、母親は約3人に一人(36.5%)が過体重(BMI25以上)と深刻であり、子ども(男児の高年齢層と女児の低年齢層)と母親の体格に正の相関がみられた。また社会経済的要因として母親の教育歴、雇用形態、世帯の等価所得について、子どもの栄養状態との関連を検討したところ、母親が低教育歴では子どもの痩せが多く、また低等価所得で子どもの過体重が少なく、一方、母親が有職で子どもの過体重が多いことが分析結果より得られた。このように社会経済的要因により子どもの栄養状態に違いがある可能性が示唆されたことから、家庭環境によらない健康格差是正に向けた取組みが求められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、前年度の横断調査のデータを解析し、学会での発表および論文を投稿・執筆中である。日本の学校食育の取り組みについても情報収集を行い、次年度の介入研究の準備を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度にスリランカにおいて介入研究を予定しているが、2019年4月21日に発生した同時爆破テロにより現地の治安が悪化し、外務省の渡航安全情報の危険レベルが引き上げられた。このため、現地の関係者と密に連絡を取りつつ状況把握に努める。その間、横断調査のデータ分析をさらに丁寧に進め、栄養指標の基準値の探索など研究成果の公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)次年度に介入研究を控えているため、より効果的な時期にスリランカへ出張できるように渡航費を繰越したこと、また論文掲載に時間を要し投稿料を年度内に計上しなかったため。 (使用計画)平成31年度に計画しているスリランカ出張の旅費や、論文投稿にかかる英文校正費や投稿料に充当する予定である。
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