本研究では、多様な放射線画像より自動で病変を検出し、疾患を限定することなく画像診断支援を実現するための統合的画像診断支援システムの構築を目的としている。このシステムは、コンピュータ支援診断(CAD)システムに含まれる病変検出機能と、病変の特徴量から疾患を推測するための画像診断オントロジーを組合わせたものである。今回の研究期間では、後者のオントロジーの構築を目指している。 本年度は、画像所見と画像解析オントロジーの構築を実施した。PubMedにて、“computed aided diagnosis”と“computed aided detection”をキーワードとして2018年までに出版されたCAD関連の研究論文の抄録を収集した。次に、放射線医学と画像解析に関する専門用語を抽出するために、RadLex3.1と画像処理の用語であるコンピュータビジョンと画像処理の辞書であるDictionary of Computer Vision and Image Processing(DCVIP)の2つの用語を辞書として使用した。最後に、画像所見と画像解析に関連する用語をリンクさせるため“isAnalyzedBy”という関係を新たに定義し、オントロジーを構築した。抄録に含まれる用語の中で、2つの用語集に収載されている用語と標記が一致した語は1861であり、Radlexは1134(61%)、DCVIPは672(36%)、両方に掲載されている語は55(3%)であった。誤分割により抽出漏れが生じたのは23語(2.3%)のみであった。“isAnalyzedBy”によって267パターンの画像解析と画像所見の組み合わせが記述された。 上記の他、関連研究として辞書の用語を正確に抽出することを目指した専門用語抽出器の開発を行った。
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