本研究は、重症患者管理における末梢静脈カテーテル関連静脈炎の発生頻度とそのリスク因子を検討することにある。 本研究は当初の予定通り、2018年1月1日から3月31日までの3ヶ月間に患者登録を行い、その期間にICUに入室した患者に対して挿入された血管内カテーテルの情報と投与薬剤の情報を収集した。参加施設は本邦の22施設23ICUであり、患者登録数は2741名、7118本の末梢静脈カテーテルが登録された。当初サンプルサイズとして予定していた症例数は5500本の末梢静脈カテーテルであり、十分数のサンプルが得られた結果となった。 7118本の末梢静脈カテーテルのうち、ICUで新規に挿入された末梢静脈カテーテルは48.2%であった。末梢静脈カテーテルによる静脈炎の発生割合は7.5% (95% CI 6.9-8.2%)であり、100カテーテル挿入日当たりに換算すると3.3件であった。患者当たりの発生数としては12.9% (95% CI 11.7-14.2%)であり、100カテーテル挿入日当たりに換算すると6.3件であった。静脈炎と診断されて抜去された末梢静脈カテーテルのうち71.9%はGRADE 1の静脈炎であり、最重症であるGRADE 4は1.5%であった。また、カテーテル関連血流感染症 (CRBSI)の発生割合は0.8% (95% CI 0.4-1.2%)であり、静脈炎とCRBSIを含めたcatheter failureの割合は21% (95% CI 20-21.9%)であった。 重症患者を対象としたサンプル数をこれだけ多く収集した研究報告はこれまでになく、primary outcomeである静脈炎やカテーテル関連合併症の発生頻度の疫学を提示することができるだけでなく、重症患者における血管内カテーテル挿入の疫学や、投与薬剤の疫学などの追加解析も可能となるデータベース作成が可能となる。
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