本研究の目的は、直腸温を用いた死後経過時間推定法の向上と、先行研究における乳幼児例に対する新法の検討である。今年度の主な予定は、従来よりも精度の高い分解能0.1℃の温度データロガーを導入してのデータ収集と、その解析、および結果の報告である。 我々は従来、宮城県下の全警察署に分解能0.5℃のデータロガーを配布し、死後経過時間推定の実務に利用してきた。本研究では、2018年5月に新しい分解能0.1℃のデータロガーへの入れ替えが完了し、実務利用を開始した。それと同時に、先行研究で問題となった「直腸温測定中の死体の保管状況」を調査するための調査票を作成・配布した。 今年度も実務症例からのデータ収集を継続してきたが、解剖数の大幅な減少によってデータ分析に適した症例の収集が非常に難航した。特に乳幼児例では、分析条件を満たす症例が2例であったため、先行研究との比較を行うには不十分であり、提示した方法の有用性を確認するにとどまった。 成人例では、先行研究で示した死後経過時間推定法の有用性が示された一方で、分解能0.5℃と0.1℃のデータロガーにおいて、推定結果の精度に改善は見られず、分解能0.5℃のもので十分であることが示唆された。データロガーの温度分解能を高く設定すると電池寿命が短くなるため、本研究中にも電池切れなどによってデータロガーの買い替えが必要となり、かなりのコストがかかった。データロガーを実務に用いる際のコスト削減について、有用な知見が得られたものと考える。 これらの結果を全国学術集会で発表し、当教室でのこれまでの取り組みと、今後の展望について報告した。
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