研究課題/領域番号 |
17K15876
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
林崎 義映 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50739026)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 法医学 / 人骨 / 性別 |
研究実績の概要 |
法医実務における骨を用いた性別判定は、現在もなお、重要であり続けている。つまり、骨形態には多様性があり、必ず非典型的(中性的あるいは異性的)な形状の骨の個人が存在しているため、骨を用いた完全な性別判定は不可能であり、確定にはDNA検査の結果を待たねばならない。しかし、骨の保存状態によってはDNA検査ができない場合もあり、また、DNA検査が可能でも出来る限り早急に性別の見込みを要する場合(司法解剖が該当)があり、可能な限り骨による判定の精度を高める必要がある。 骨の性別判定には、形態観察法と数値計測による方法とがある。前者に関して言えば、熟練者における的中率は高いものの、客観性・再現性に難点がある。後者においては、全体や部位の大きさを計測し解析する方法がほとんどで、骨の複雑な曲線形状を十分に反映しているとはいえないものが多く、熟練者の観察と同程度の精度を保つことにも苦心している。 本研究の目的は、人間の骨に対してフーリエ解析を実施することにより、客観的かつ骨形態を十分に反映した高精度の性別判定法を確立することである。フーリエ解析は、ある一つの複雑な波を、それぞれ異なる周波数の複数の波の合成と捉え、それぞれの周波数成分の要素に分解することができる。したがって、複雑な骨形態の解析に適していると言えよう。 なお、現在は、死後CT画像を撮影できるようになった法医実務の現場が増えてきている。性別判定のための試料としてCT画像を利用した方法は、再現性や証拠保全性といった点で優れているため、本研究においても骨そのものではなくCT画像を対象としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が東北大学から埼玉医科大学へ異動となったものの、たびたび東北大学を訪れて研究協力者との打ち合わせを行い、また東北大学オートプシーイメージングセンターで撮影したCT画像データの利用は続いており、特に研究への支障は出ていない。 当初、既に一定の成果が得られている恥骨下角・大坐骨切痕の解析を土台に、新たに骨盤口の形状を解析する予定であったが、骨盤口の立体的な形状を適切に平面に落とし込みつつ、測定者間誤差の小さい方法(骨盤口の形状抽出方法)を如何に設定するかで問題が生じており、現在、客観性と平易さを共存させる手法について研究協力者と協議中である。代わりとして、平成29年度は頭蓋骨の解析を予定よりも前倒しして実施した。 頭蓋骨においては鼻根部から冠状縫合までの正中線の形状(スブナジオン-ブレグマ間)を抽出し、フーリエ解析を行ったところ、肉眼的な形態観察による報告(複数の論文で的中率8割台)と比較して遜色のない的中率が得られた。 したがって、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
現在の法医学実務において、最も標準的とされる頭蓋骨の肉眼的形態観察法(Frembach(1980)あるいはBuikstra(1994)らの方法)では、頭蓋骨の5~10部位を評価して性別を判定する。しかし、今のところ本研究における頭蓋骨の評価部位は鼻根部から冠状縫合の形態のみの解析にとどまっている。平成30年度では、すでに形態抽出の目途が立っている外後頭隆起について解析を進め、さらには前述の形態観察法の観察部位である乳様突起・眼窩上縁・オトガイ隆起についての形態抽出法を検討したい。進捗状況に述べたように、骨盤の形態解析については平成29年度から検討中であるが、誤差が小さい前提でなるべく簡便な方法を開発する必要がある。頭蓋骨以外の骨の性別判定については、あまり有効な方法が報告されておらず、実務上も骨一片だけの鑑定は多くないため優先順位として低い。頭蓋骨・骨盤骨の解析が完了した場合には四肢長管骨や椎体等の解析を検討することになる。 なお、埼玉医科大学には死後画像診断用のCT機器は存在しないため、平成30年度も引き続き東北大学医学部Aiセンターで撮影された剖検前CT画像を利用し、研究を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に伴い、CT画像データの持ち出しのための倫理申請に時間を要し、異動元で画像解析を進めていたことから、申請していた画像解析用ワークステーション(\700000)の購入を延期していた。現在は現所属先でも研究が可能となったため、近日中にこの画像解析用ワークステーションを購入する予定である。
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